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堕天使物語 -サタン誕生-  作者: 平岡春太
 第五章 それぞれの戦い

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 第二話 遺恨

「この私に剣を向けるとはどう云うつもりだ? まさかお前━━」


 話の最中、サバタイがまた入口に目を向ける。

 今度はルシフェルとルキフグス、そして魔獣の姿のマルコキアスが入って来た。


「ほう、これは、これは」


 ルキフグスは愉し気に笑みを見せる。


「これは一体どう言う事だ?」


 マルコキアスは悪魔に姿を変えるなり驚きの声を洩らす。


「こんな時に。誰か居らぬのか!」


 サバタイの呼ぶ声も虚しく、応える声も、悪魔の姿もない。


「幾ら呼んでも無駄だ。お前の下僕は我等が片付けた。残って居っても知れている」

「そ奴等も最早逃げたかもしれぬな」


 ルシフェルに続き、ルキフグスが答える。


「たった三匹に我が国が落ちたと云うのか? そんな馬鹿な。マルコキアスが居るとは云え、そんな事が━━む? あれはまさか、ルキフグスではないか!? それにもう一匹は見かけぬ顔だが、ルキフグスに負けぬあの体、カレガタナスが云っておった奴か。くっ、いつの間にプロセルピーヌの所にあのような者達が……いや、今問題なのは」


 サバタイは目の前で剣を合わせたままのカレガタナスに目を移す。


「間違えるでないぞ。お前の相手はあ奴等ではないか」

「間違ってなどいない。言っておくがこれは反逆などではない。度重なるお前への恨みだ」

「恨みだと? 私はお前の育ての親ぞ。その恩に対する礼は受けても、恨みを買う覚えはないぞ」

「よくもぬけぬけと。確かに捨てられていた私を育て、姿の変え方も教えてくれたのはお前だ。だがそれは全てお前の為ではないか。私を道具のように扱い、失敗する度に酷い仕打ちを受けた。今までは確かに恩があるからと耐えて来たが、既に我慢の限界であった。だから、誰にも邪魔されないこんな時を待っていたのだ。お前達は手を出すなよ」


 最後の言葉はルシフェル達にだ。


「どうする?」


 マルコキアスがルシフェルに訊く。


「どの道サバタイは殺すつもりでいたのだ。誰が殺しても構わぬであろう」

「それもそうだ」


 勿論同意するのはルキフグスだ。

 サバタイの顔に苛立ちが募る。


「どいつもこいつも馬鹿にしおって。例え一匹だとしても貴様等全員始末してくれるわ!」


 カレガタナスの剣を弾くと共に、サバタイのもう一方の手も剣に変わる。


「まずはカレガタナス、望み通り貴様から殺してやる!」


 一本の剣を(かわ)しても、もう一本が透かさず振るわれる。その剣技は、王に上り詰めただけあってかなりのものであった。

 カレガタナスも、振るわれた剣を自らの剣で弾き、更に振るわれるもう一方の剣を、身を翻して躱す。


「甘いわ!」


 躱されたサバタイの剣が鞭に変わり、カレガタナスの首に巻き付いた。

 そこにもう一方の剣で斬り掛かる。

 カレガタナスは剣を合わせて受け止める。しかし首を絞められていて力が入らず、じりじりと押されて行く。


「貴様に剣の扱いを教えたのも私だ。勝てるはずもなかろう」


 サバタイの口から笑い声が洩れる。

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