第一話 剣を向けるのは
「大変です!」
大声をまき散らしながら通路を走る一匹の
ガーゴイルが駆け込んだ先は、サバタイが居る王室であった。
ガーゴイルは玉座に座るサバタイの前で片膝を落とし、そそくさと一礼を済ます。
「何事だ? 先程から騒がしいぞ」
「そ、それが、プロセルピーヌの国と思われる者達が攻めて来ました!」
「何だと!? 向こうから攻めて来たと云うのか? 馬鹿な。あの国はサタナエルも狙っておるのだぞ。今のあの国に二つの国を相手する戦力はないはずだ。確かにプロセルピーヌの者達なのか?」
「攻めて来た者達の中にマルコキアスの姿がありました。間違いありません」
「そうか、ならば間違いあるまいな。国を捨て、全勢力を上げて攻めて来たと云うのか」
「いえ、違います」
「違う?」
「攻めて来たのは三匹だけです」
「三匹? 攻めて来たのはたった三匹だと云うのか?」
サバタイは哄笑する。
「気でも触れたか。たった三匹でこの国を落とそうなどと━━」
一度は嘲るも、慌てて駆け込んで来たガーゴイルの様子と今のガーゴイルの表情に、考えは一変する。
「まさか、まだ始末出来ておらぬと? 奇襲でも受けたのか?」
「いえ……奴等は隠れもせず、正面から来ました……」
ゆっくりと立ち上がったサバタイは、その顔を徐々に怒りで満たし、ガーゴイルに歩み寄る。
小刻みに体を震わせ出すガーゴイルの前で屈み、その首を摑む。
「正面から攻めて来て、それもたった三匹が始末出来ていないだと?」
ガーゴイルの体が一気に引き上げられる。
「そ、それが三匹と言えどかなり手強く━━」
サバタイが首を摑む手を強め、話を切る。
「云い訳などいらぬ。相手が強いなどと云っておれば国など亡ぶ。況してやたった三匹相手に何たる事だ」
突如サバタイの右手が伸びたかと思うと、それは一瞬にして剣と化した。
ガーゴイルは必死に首を摑むサバタイの手を外そうとするが、その手は輪となって完全に外れなくなった。
それでも尚足掻くその胸に、剣と化したサバタイの右手の切っ鋒が吸い込まれて行き、体を突き抜けると共にガーゴイルは絶命した。
サバタイは剣を引き抜いて血を振り払い、両手を元に戻す。
「それにしてもカレガタナスは何をしておるのだ? 例え相手の中にマルコキアスが居ろうと、奴ならば手を焼く事もなかろうに」
「私ならばここにおります」
入口からカレガタナスが入って来た。
その全身には、プロセルピーヌの暗殺に失敗して仕置に付けられた無数の傷が完治せずに残っている。特に背中の傷は酷い。
「何故お前がここに居る? 敵が攻めて来た事は知っておろう」
「もちろん知っております」
「ならば早く攻め入って来た三匹を始末して来い!」
「その前にやる事があります」
「やる事だと?」
「そう、この機をずっと待っておりました」
「何を訳の分からぬ事を云っておる。早く━━」
カレガタナスが剣を抜き、駆け出した。それも、サバタイに向かってだ。
一振りされた剣を、サバタイは素早く剣に変えた右手で受け止める。




