最終話 混迷の中の決議
「馬鹿げておると思っておるのか? 我は本気だ。それとも、たった三匹で行くのが怖いか?」
「逆だ。逆だ。相手の数が少ないのなら、役に立たぬ奴をぞろぞろと連れて行くより良い。存分に暴れられるからな」
「承知したと取って良いのだな」
「行動を共にすると云うておるのだ。断る理由もあるまい」
それに慌てたのは、当事者たるマルコキアスだ。
「待て! 待て! 本気で三匹で行くつもりか? 私はまだ何も決めておらぬぞ」
「何じゃ。お前は三匹で行くのが怖いのか?」
ルキフグスが茶化して言う。
「怖いとかそう言うものではない。女王様も仰ったが、たった三匹で一国に攻め入るなど、どう考えても無謀であろう。況してや正面突破など、論外だ」
「無謀? 論外? そんなもの、やってみなければ分からぬであろう。それに、この三匹ならそれが出来ると確信がある」
これはルシフェルだ。
「ほう、儂を信じ切れるか? もしかすれば戦場で裏切るやもしれぬぞ」
本気か冗談か、ルキフグスの顔からは見て取れない。
「その時は、お前を先に始末するまでだ」
「これは楽しみだ」
「おい、だから話を勝手に進めるな。私は何も決めておらぬと言っているだろう」
「ならどうする? この国がサバタイかサタナエルの国に攻め入られるのを待つか?」
「それは……」
マルコキアスは横目でプロセルピーヌに助けを求めるが、プロセルピーヌも決め兼ねた様子であった。
「いかん。今は私が女王様を助けねばならぬと言うのに……」
マルコキアスはしっかりとした目をルシフェルに向ける。
「それで、勝算はあるのか?」
「必ず勝てる。必ず負ける。そんな戦いに何の意味がある? 勝つか負けるか、分からないこそ面白いのだ」
「本当に面白い事を云う奴だ。付いて来た甲斐があると云うもの。お前もこの国の重臣であろう。あれやこれやと考えるのもいいが、己の王の前で良い所を見せてみよ」
ルキフグスに背中を軽く叩かれ、マルコキアスはつんのめる。
「全く、何て力だ。ええい、分かった。行けば良いのだろう」
「そう云う事だ。マルコキアスだけは連れて行くが、良いな?」
「本当に良いのか? 望むなら幾らか兵を付けて良いのだぞ」
「我が信じられぬか?」
「いや、それほどの自信があるなら疑いなどせぬ。頼むぞ」
次々とルシフェルの案に同意する中、水面に浮かぶ六つの頭だけは疑心を拭えなかった。
「たった三匹とは何とも無謀な」
「良いではないか。死んだら死んだで厄介者が居なくなるのぞえ」
「それではマルコキアスまで失うではないか」
「それも困る……」
《第五章へと続く……》




