第十二話 正面突破
少し遅れて衛兵らしき数匹の悪魔が駆け込んで来た。
その全てが痛そうな顔をしている。
強引に中に入ろうとしたルキフグスを止めようとして、簡単にあしらわられたのは容易に想像がつく。
「何をしておる。女王様の御前であるぞ。お前達は下がれ」
咎めたのは水面に浮かぶスキュラの六つの頭の一つだ。
「ですが……」
「お前達が来たとて、そ奴は止められぬであろう」
衛兵達はルキフグスをねめつけながら外に出て行った。
「あれがルキフグスか。大きいぞえ」
「我等とどちらが大きいか」
ルキフグスがプロセルピーヌに向かって来る中、プロセルピーヌの前で片膝を床に落としていたマルコキアスが慌てて立ち上がり、ルキフグスの前に立つ。
「こちらが呼ぶまで外で待っておいてくれと言ったではないか」
「聞こえなかったのか? 儂は力を貸すとは云うておらぬとな。ただそいつと行動を共にする為にここに来たに過ぎぬ。お前の云う事を聞く筋合いはないはずだが?」
ルキフグスは歩みを止めない。が、
「無礼ぞえ!」
「控えよ!」
「女王様の御前じゃぞ!」
スキュラが矢継ぎ早に怒鳴り声を飛ばす。
「止めるのじゃ。ルキフグスも下僕が居らぬようになったとは云え一国の君主なのじゃぞ。そこは対等で良い」
「ほう、良き事を云う」
歩みはプロセルピーヌの前で止まった。
「女とは云え、さすがは一国の君主。お前がかの大女悪魔のプロセルピーヌか。噂に違わぬ美しさだ。いや、それ以上か」
更に歩み寄ろうとしたルキフグスの間に今度はルシフェルが割って入り、睨むような目を向ける。
「我はこの国を守ると決めた。その為にサバタイの国に攻め入る。我と行動を共にすると云うなら、お前も共に戦って貰うぞ」
ルキフグスはルシフェルの視線を外し、背を向ける。
「そういきり立つな。それが行動を共にすると云うなら仕方なかろう。それで、策はあるのであろうな?」
「この国は二つの国に狙われておる。訊けば、サバタイの国の兵力はサタナエルの国の兵力よりかなり劣ると云う。ならば、この国がサタナエルの国に攻め入られぬよう、サバタイの国には少数精鋭で行くのが得策であろう」
「ほう、理に適っておるな。して、数は?」
「我とマルコキアス、そしてルキフグスの三匹だけで良い」
「三匹!?」
驚きの声を上げたのはマルコキアスだ。
声こそ上げなかったが、プロセルピーヌとスキュラの六つの頭の顔も驚きを見せる。
「待て。幾らサバタイの国がサタナエルの国より劣ると云っても、さすがにたった三匹では無謀ではないのか? それとも奇襲のような奇策でもあるのか?」
プロセルピーヌが訊く。
「大きいのが二匹も居るのだ。身を隠した所でどうにもなるまい。ならば正面から堂々と攻め入るまで」
「たった三匹で正面突破か。こいつは面白い」
ルキフグスの哄笑が部屋に響き渡る。




