第十一話 同行
木の陰から魔獣と化したマルコキアスが羽を広げて飛び出し、サラマンダーの前に廻り込むと共に口を開き、サラマンダーよりも早く炎をサラマンダーの右目に吐き出した。
右目を焼かれたサラマンダーは、悲痛な叫びを上げて暴れ廻る。
透かさずルシフェルがサラマンダーに向かって右手を振り上げた時、その横を巨大な影が駆け抜けて行った。
暴れまわるサラマンダーに向かって飛び上がった巨大な影、それはルキフグスであった。
飛び上がりながら振り上げた斧を、降下しつつサラマンダーに向かって振り下ろす。
斧はサラマンダーに届いていなかった。が、サラマンダーは突如として動きを止めたのも束の間、その巨体が中央から真っ二つに分かれ、轟音を立てて崩れ落ちた。
着地したルキフグスは直ぐに向きを変え、斧を肩に担ぎつつルシフェルと悪魔の姿に戻っているマルコキアスの元に歩み寄って来た。
「この辺りにははぐれた魔竜が良く出おる。食われる前で良かったな」
「余計な事を。お前がやらずとも片付けておったわ」
「腕を焼かれておいてよく云うわい」
「この程度、怪我の内にも入らぬ。それより、どうしてここに居る? 城から出ぬのではなかったのか?」
「気が変わった。お前は儂と違うと云ったであろう。それがどう違うか知りたくなったのでな。それに、お前が魔王になれるのか単なるはったりで終わるのか、この目で確かめたくなったのよ」
「どうやって確かめるつもりだ?」
「お前と行動を共にしておれば分かるであろう。だから、一緒に行かせて貰うぞ」
「勝手にするがいい」
背を向け、歩み出したルシフェルの顔からは笑みが溢れる。
その後に続くルキフグスの顔からも笑みが溢れていた。
そんな二匹の姿を、マルコキアスは訝しげに見ていた。
「あの暴君を丸め込むとは。それにあいつ、最初からこうなると予期していたような感じだが……」
プロセルピーヌの城に戻ったルシフェル達は、先にルシフェルとマルコキアスが王室に入り、プロセルピーヌに報告を済ませた。
「そうか、既にあの国は亡国同然となっておったのか。じゃが、あのルキフグスが力を貸してくれるとなれば、どれほど心強いものか」
ヴェールの奥から出て来て階段を下りて来たプロセルピーヌが話していると、入口の方から複数の争う声が聞こえて来た。
全ての視線が入口に集まる中、ルキフグスが悠然と入って来る。
「誰がそう云った? 儂は何も力を貸すとは云うておらぬぞ」




