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堕天使物語 -サタン誕生-  作者: 平岡春太
 第四章 亡国の王

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 第十話 思わぬ襲来

「本当にこのまま帰るつもりか?」


 城の出口に向かって歩きつつ、マルコキアスが訊く。


「無理矢理連れて来た所で、あれではどうしようもあるまい。それよりも早く戻り、新しい策を考える方が賢明であろう」

「止むを得ないか」


 城を出たルシフェルは早々に羽を広げる。が、


「待て。飛ぶな」


 マルコキアスが慌てて止める。


「何故止める?」

「上空を見てみろ」


 空は相変わらず分厚い雲で覆われている。

 その中ではゴロゴロと音を立て、時折雲そのものが光を見せている。

 今にも雷が産声を上げそうだ。


「飛んでいる時に雷が落ちれば直撃を食らうぞ。少し時間がかかるが、安全もな所まで歩いて行こう」

「我は雷など気にならぬが、お前はそうも行くまい。仕方あるまいな」


 ルシフェルは羽を戻し、歩み出す。


「全く、口の減らない奴だ」


 呆れつつも、マルコキアスは歩み出す。

 暫くして、空が落ち着いて来た所でほぼ二匹の足が同時に止まった。

 ただそれは、飛び立つ為ではなかった。


「おい、聴こえるか?」


 真剣な面持ちでルシフェルが訊く。

 マルコキアスもまた険しい表情で深く頷く。

 遠方より軽い地響きが伝わって来ると共に、時折奇声のようなものが聴こえて来る。

 それが徐々に二匹に向かって近付いて来るのだ。

 近付いて来るそれが何か巨大なものの足音だと判って束の間、二匹の前方にある数本の木々を薙ぎ倒し、巨大な四足の竜が姿を現した。

 マルコキアスは、眉を顰める。


火竜(サラマンダー)だと? 馬鹿な。魔竜が出る地域はここより遠いはず。どうして……?」


 サラマンダーは二匹の姿を認めると、先割れした長い舌を出し入れする。


「考えている暇はなさそうだ。どうやらあいつの目当ては我等を食べる事らしい。餌になりたくなければ、お前も早く魔獣の姿になる事だ」

「言われなくとも」


 マルコキアスは横手にある木に素早く身を隠した。

 魔獣に変態する時に無防備になるからだ。


「言葉の割には、手間の掛かる奴だ。仕方あるまい」


 ルシフェルはその場から少し離れ、サラマンダーを引き付ける。

 釣られたサラマンダーは向きを変え、大きな足を振り上げ、ルシフェルを踏みつけようとするが、ルシフェルは横に飛び退いて軽々と躱す。


「がたい通り動きが鈍い。容易く躱せるわ」


 サラマンダーは間髪入れずにルシフェルに顔を向け、大きく口を開けるなり炎を吐いた。

 これには不意を突かれ、炎は咄嗟に身を引いたルシフェルの左腕を掠めて皮膚を焼く。


「炎を吐けるのか」


 尚もルシフェルの方に顔を向け、大きく口を開ける。

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