警部補再昇進
「あんまり町のおまわりさんって感じはしない…と言うだろうな。天国にいる土方さん達は?」
「永倉…いえ杉村さん?こんな所で何をしているのですか?」
「警視局が廃止になってから藤田五郎がどうなったか気になっていたんだ。」
「どうもしませんよ。確かにコネで入った所ですから、お偉いさんの意向次第では私の首なんざひとおもいに吹き飛ばされますよ?まぁ縁あって入局した所ですから喰らいついても頑張りますよ。階級を下げられたとしてもですね。」
「そうなのか?」
「はい。警部補だったのが、警視庁再編後は巡査部長に格下げになりました。」
「昔から人の下で動くのは得意ではなかったか?」
「まぁ、あまり上とか下を気にするタイプでは元々なかったですし、やってる仕事も幕末の頃に比べればおままごとの延長の様なものです。所で杉村さんは今どうやって生活をしているのですか?」
「妻も子供もいる身だ。道場で剣術を教えながら生計をたてているよ。」
「明治の世になってもまだその様な事を…。」
「新選組で撃剣師範をしていた貯金で食いつないでいる様なもんだな。それより貴様の愛刀鬼神丸国重は何故帯刀していない?」
「警官にも廃刀令が出回ってましてね。帯刀出来るのは特別な許可がある人に限られています。この警棒とピストルで身を守れと教育が徹底されています。」
「そんな木の棒とピストルで犯罪者を制圧しろとは幕末の頃とは随分な変わりようだな。」
「はい、変わりました。おかげで治安は良くなりもう日本刀など治安維持には不必要になりました。」
「そうかもな。でも今度は陸軍や海軍の兵隊達が悪さをする様になったのでは?」
「いえ、そうも思ったんですけど、お偉いさん方の権力争いと、下っ端の軽犯罪以外には警官が出る必要は無くなり、結果として国内では平穏なんですよ。」
「国内では?」
「明治新政府は清や露と戦争する準備を進めているらしいですよ。」
「負けたら国が滅ぶだろうに…。」
「そこまでは深く考えてはいないのでしょう。日本政府はとにかく大陸での権益が欲しいのでしょう。」
「戦争が始まれば男手は皆軍に取られて結果として犯罪率は下がるからな。警視庁としては、内心嬉しい所もあって、政府のやる事には何も言わねぇのさ。」
その後、藤田五郎は1885年(明治18年)に警部補に再昇進した。
「これでやっと木の元網に戻れたな。」
と労われたが五郎はあまり嬉しくない。と言うより無外であった。




