警視局の廃止
その後明治14年(1881年)に警視局が廃止されると、一旦陸軍省御用掛となりその後警視庁の再設置により、同年11月に巡査部長となる。
「せっかく警部補にまでなったのに、局が廃止になった時はどうなるかと肝を冷やしましたが、警視庁が再設置されて3度の飯にも困らなくなりましたよ。」
「すまんな藤田。お前だけではなく多くの人間にも迷惑をかけた。東京の治安維持にあたる警視庁の再編が必要だと上からの命令でな。この時期での再編となった。」
「階級は何故据え置きにならなかったのですか?」
「新組織の人員整理が行なわれてな。退職に追い込まれた人も多くてな。」
「残れただけでも御の字と言う事ですね?」
「そう言う事だな。」
「理不尽極まりないですね。まぁ明治新政府軍のやる事ですからね。辞めろと言えば辞めるしかないですね。」
「その間は陸軍さんの世話になりました。海軍に頼む訳にもいかないし、他県の県警もそれどころじゃなかったですからね。長州のよしみで陸軍さんに世話になったんです。」
「警官だけの特権だった日本刀の帯刀も基本的にNGになったと聞きましたが?」
「法律が改正されて許可が無ければ廃刀令が適用される事になったんだよ。」
「では、許可を貰えれば良いのですね?」
「と、申されましても許可を与えるのは警視庁のトップである警視総監です。特例でもなければ、帯刀は不可能です。代わりにこれを。」
「何だこの木は!?」
「警棒です。それとピストル(拳銃)これで治安を守るのです。」
「鬼神丸国重の方が…まぁ良いか。これも時代の流れだな。」
「一介の巡査部長の為に会ってくれる道義もないか?」
「大体廃刀令が施行されて何年経っていると思う?」
「まぁ、そうですね。」
「その鬼神丸国重は家宝にでもすれば良いさ。」
「日本刀は使ってなんぼの剣だ。」
「藤田巡査部長が新選組3番隊組長で撃剣師範を務めていた事を知っている人の方が少ないですよ?」
「斎藤一の名も廃れたか。」
「実際警視庁にいる方が長くなっているんじゃないですか?」
「まぁ、言われてみればそうなんだが、新選組は俺の青春でもあるんだ。絶対に忘れる事は出来ない。」
「色々思う所はあるかもないが、警棒とピストルをこれからは携行してくれ。」
藤田五郎は時代の荒波の中で、もう過去には戻れない事を悟った。




