三男藤田龍雄
藤田五郎の三男龍雄は弁護士として活躍した。
「勉兄さんや剛兄さんの様な派手さは無いけど、困っている人を法律で助けたいと言う想いは負けないよ。」
「龍雄?そう言うのは勝った負けたではないだろ?」
「俺は末っ子だから甘やかされて来たんだ。弁護士になれたのもたまたまだよ?」
「実力が無ければ司法試験に受からないだろう?」
「確かに学校の成績は良かった。けれど陸軍士官学校や貿易商になる勇気は無かった。自分の持っているポテンシャルに自信が無かったんだよ。」
「そう言う比べ方は父さん、あまり快く思わないな。」
「父さんの言う通りだよ。龍雄?並の努力じゃ弁護士にはなれない事位母さんだって分かるわよ?」
「時代が変わったな。」
「時代?」
「父さんの若い頃は剣の腕っぷし一つで勝負出来た。いくら学問が出来ても武士ではない者はどうしようも無かった。」
「そうなの?」
「父さんは沢山の人間を殺めて来た。それが新時代の為だと信じていたからだ。だから、龍雄の様な勉学の立つ者にこそ開かれた新時代なんだ。」
「確かに剣の腕っぷしは、勉兄さんにも父さんにも全く歯が立たなかった。剛兄さんの様な証人の力も無かった。残ったのは学力だけだった。」
「それで良いじゃねーか?市民平等の時代、誰が何をしようとも自由だ。新選組は負けて消えたが、今はそれが運命だったと思っている。」
「出た。また新選組かよ?」
「父さんの青年期は龍雄が勉学にうちこんだように、父さんは剣にうちこんだんだ。これを見よ!」
「もう良いって。鬼神丸国重でしょ?」
「そんなボロ刀さっさと鍛え直してもらえよ?」
「必要はないかも知れないが、この刀こそ父さんの青春。勉にも剛にも見せたことは無い。」
「父さん?」
「母さんには何度か見せた。」
「って言うか父さんバツイチでしょ?」
「それと鬼神丸国重に何の関係がある?」
「そうよ龍雄?この鬼神丸国重は父さんを守ってくれた立派な刀。ボロボロだけど、もう父さんは戦わないと信じているから鍛え直さないの。」
「俺、立派な弁護士になって弱い人を助けるよ。」
「あぁ、それで良い。」
「頑張ってね!龍雄。」
「父さん、ボロ刀なんて言ってゴメン。鬼神丸国重が無きゃ俺は生まれてないもんな。」
「そうだ。藤田家の守り神だ。」
三男藤田龍雄には五郎の全てを伝えた。斎藤一時代の新選組の事は全部。それが龍雄の為になると分かっていたかの様に五郎は、溺愛する末っ子に全てを話した。




