2度目の結婚
時は流れ明治7年(1874年)斎藤は髙木時尾と再婚する。30歳の事であった。この頃から氏名を藤田五郎と名乗り始める。
「一さん?五郎さん?どうお呼びすれば良いですか?」
「私はもう藤田五郎になった。よって五郎と呼んでくれ。」
「それより時尾?子供を作りたいのだが?実は前妻との間で上手く行かなかったからな。」
「それで離縁に?」
「あぁ…そうなんだ。だから君の様な女性を探していたんだ。私のような者が並の幸せを求めてはいけないのだが、せっかく生き長らえた命と人生だ。私もその幸せを享受したい。」
「どうして五郎さんが並の幸せを享受してはいけないのですか?」
「昔の事にはなるが、時尾に聞く覚悟はあるか?」
「はい。五郎さんの妻なので。」
「相当に生々しく残酷なものもあるぞ?」
「全て受け入れます。そのつもりで結婚しましたから。」
「いつから話せば…。」
「ちょっとずつで良いですよ。キャパシティはそんなに多くないので一度にバーッと話されても受け止められません。」
「分かった。ではそうする。」
こうして二人は愛を深めて行った。
「五郎さんて今も昔も変わらないのね?寡黙でブスっとしてぶっきらぼうで。」
「よく新選組時代もからかわれたよ。斎藤は不器用だって。」
「でも何で今になって名前を変えたのですか?」
「斎藤一だと何かと不都合だからね。まぁ色々と訳ありな名前だったからね。それにこれから東京で生きていくには、藤田五郎の方が都合が良いんだ。」
「え?東京?」
「あぁ…7月には移住するつもり。」
「仕事はどうするのですか?」
「東京の治安維持を担う警視庁で諜報活動の任務を任される予定だ。」
「もう斗南藩(青森県)には?」
「戻らないつもりだ。元々私は江戸っ子だったしな。縁あって斗南藩の世話にはなったが、ここにいても何もする事はないんだ。」
「と、言う訳で江戸(東京)に戻る事になりました。」
「会津の世話になりっぱなしじゃ肩身が狭いからのう。」
「いや、そうじゃないんですよ。」
「え?」
「青森県知事と大警視殿が私や尾形俊太郎と言った新選組隊士をどうにか使ってくれないかと斗南藩主に直々にお願いしたんですよ。」
「まぁ、結婚が被るあたり相変わらず運の悪い男だよな。つくづくそう思う。」
「永倉さんの言う通りですね。」




