斗南藩時代
謹慎生活を終えた斎藤は、下北半島五戸に移住し篠田やそと結婚。大身に属す。子を持てなかったのか直ぐに離縁してしまう。斗南藩士としてはじめのうちは戸惑いもあったが、持ち前の真面目さと実直で素直な人柄で、藩政を支えていく。
やそとの不仲は、仕事に没入してしまう新選組時代の癖が抜けておらず、やそは大身にも関わらず次第にすれ違って行ってしまったのが原因であった。斗南藩はどちらかと言えば保守的な藩であり、元会津藩出身者も多く斎藤としては居心地が良かった。
「斎藤!頼まれていた鬼神丸国重の修理終わったぞ?」
「誠か!どれ。」
鞘から抜き出すと傷一つ無い刀身が姿を現した。
「お代は大将がタダで良いって。」
「それはいかん。こんなに綺麗に仕上げて貰った刀匠に悪い。」
「まぁ、ここは私の顔に免じて受け取ってくだされ。」
「何故この様な事を?」
「大将が昔新選組に命を助けてもらったとか言ってたよ。」
「それより、やそちゃんの事本当に手放して良かったのかい?」
「そりが合わないし、何だか大身とやらが性に合わなくてな。」
「まぁ、初婚だもんな。」
「それにあちらの方もやそはさっぱりでな。」
「あちらの方ってまさか!?」
「そのまさかだよ。結婚とはそう言うものだと思って夜の営みを試みたのだが、やその奴御嬢様でな。全然知らんのだ。」
「やそちゃんはこの辺では有名な名家の生まれだからな。」
「斗南藩の仕事にも慣れて来て飯炊きは上手くなったが、そっちの方は教えるにも何かまどろしくてな。」
「それで離縁?」
「あぁ。次に結婚する相手は自分の目でしっかりと見極めてからにしようと思います。」
「よ!斎藤!」
「永倉さん!?」
「まだ生き残っていたか。」
「どうしてこちらに?」
「土方さんのお骨を蝦夷から生家の東京日野に持ち帰る途中でな。陸奥斗南藩士になった新選組幹部隊士がいると聞いて寄ってみたがや。」
「これが土方さんのお骨!?」
「そんな事より結婚して落ち着いてくれるかと思いきや、半年も立たずうちに離縁とはな。」
「そう言う事もありますって!」
「ワシも土方さんのお骨を日野の実家にしっかり送ったら、結婚でも考えようかのう。」
「それが良いですよ!」
「じゃあそろそろ行くわ!」
「また文でもよこしてください。」
と、明治3年の冬の事で、斎藤は26歳になっていた。




