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藤田五郎警部の幕末回顧録〜誠に生きた男達〜  作者: 佐久間五十六


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スパイ(間者)の粛清

斎藤一は新選組内部での粛清役を多く務めていたとされ、長州藩の間者スパイであったとされる御倉伊勢武、荒木田左馬之助の他武田観柳斎の暗殺に関与するなど、いわゆる汚れ役を任されていた。


「最近間者多いな?」

「自分もそう感じます。まぁ、そう言う輩はこの鬼神丸国重の餌食になるんですが。」

「相変わらず心強いな斎藤は。」

「無外流を学び更に強くなりました。もちろん、ベースは山口一刀流や天然理心流ですがね。」

「無外流?まぁ撃剣師範の貴様に何もいちゃもんつける気はないが、マイナーな流派だな。」

「意外とイケる口ですよ?土方さんもどうですか?」

「いやいや酒じゃないんだから。天然理心流もまともにマスター出来ていないのに、他流派に手を出せるほど浮気者ではないさ。」

「…浮気者ですか?」

「あぁ…そうだな。斎藤、貴様は浮気者だ。」

「とは言え総司の様に免許皆伝は取れないけどな。」

「確かにそうかもしれない。」

「それより沖田さんの容態はどうですか?」

「それがな。これが困った事になってな。肺の病で以前の様には刀を振れないらしい。日常生活には支障はないが、部隊への復帰は厳しいと言う。」

「ならば沖田さんの分まで頑張らないと。」

「そうだな。汚れ役かも知れないが、間者や脱走者の粛清には貴様が頼りだ。その時はよろしく頼む。」

「国重の切れ味が落ちる訳だ。」

「まぁ、そうボヤくな。刀ならいくらでもそろえてやるよ。」

「この鬼神丸国重じゃないとダメなんですよ。」

「なるほど、己の愛剣にこだわるのは武士の一分と言う事か…。」

「自分の左片手平突きは、この鬼神丸国重じゃないとダメなんですよ。」

「平突きは新選組隊士にいの一番で教える技だよな?」

「そうです。だからこそ刀を選ぶのです。まぁ、沖田さんの三段突きには敵いませんが。」

「そういやぁ、総司も刀にはこだわっていたな。」

「菊一文字則宗ですね。」

「よくご存知ですね?」

「沖田さん!?」

「体調はいかがですか?」

「不思議ですね。刀を握っていない方が辛いなんて。每日退屈ですよ。」

「何言ってんだ総司?剣を振れる奴は代わりが利いても新選組一番隊組長沖田総司はこの世に一人しかいないんだぞ?」

「ほら斎藤さん。土方さんたらいつもこの調子なんですよ?」

「それはそれで愛嬌があって良いじゃないですか?まるで本物の兄弟の様だ。」

「まぁ、付き合いは長いですから。」


と、土方と沖田の親密な間柄がすこぶる良好な事に斎藤一は少し微笑ましく思えた。

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