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削り鰹のマサ  作者: えす
4/6

ヨシアキという人間

マサはその当時、削り鰹の知識をほとんど持っていなかった。

ただ、鰹節を綺麗に削るだけ。それだけしか知らなかった。


マサ「そういえばさっきの人の削り鰹すごかったな…」


………


マサは小雨の中を歩きながら呟いていた。


マサ「あ…名前聞くの忘れたな…近いうちにお礼しに行かないと」


その日、マサは近くのネットカフェに泊まる事にした。


店員「お時間の方は?」


マサ「明日の朝まで」


そんな会話をかわす。


帰る家もなく、手持ちの現金も少ないマサはこれからどうしようかと、パソコンの画面を眺めながら考えていた。

が、その頭の片隅にはずっとヨシアキの工場で目にした作品達が残っている。


マサ「世界大会が開かれるくらいだもんな…」


………


マサ「…!?そういえば昔親父がテレビで…!!」


マサは急いでキーボードを打ち込み何かを検索し始めた。



削り鰹とは、鰹節を如何に綺麗に削るか、またその速度、作品の完成度などを競う競技である。

8年前から世界大会が年に一度開催されるようになった。


第5回大会優勝者…

作品名:猫に六法全書


マサ「やっぱり…!!!!工場で僕が触ろうとした…!!あれだ!!」


マサは驚きを隠せなかった。


マサ「いやでも…引退したって…それにあれは真似して造っただけかもしれないし…にしてもすごい腕前だよな…顔写真はないのか…」


いくつかの疑問を持ちながらも、明日事実確認をしに行こうと、藤波信吾著書「削り鰹の歴史」を読破し、眠りについた。


翌日、マサはヨシアキの工場の前にいた。


ヨシアキ「…」


マサ「…」


………


マサ「昨日はありがとうございました」


ヨシアキ「何してんだよ。忘れもんか?」


マサ「実はお訊きしたい事があって…」


ヨシアキ「なんだよ」


マサ「昨日の夜、あなたの作品が気になってインターネットで調べました。そしたら僕が触れようとした作品…あれは猫に六法全書ですよね?」


ヨシアキ「…」


マサ「第5回世界大会優…」


ヨシアキ「あれはな、暇潰しに模造しただけだ。ほんもんなわけねえだろ」


マサ「…っでもあのクオリティは…!」


ヨシアキ「用事がそれだけなら帰れ。俺は暇じゃない」


ヨシアキが工場に入り扉を閉めようと振り返った時、土下座しているマサの姿が目に入った。


ヨシアキ「何の真似だそりゃ?」


マサ「模造でも偽物でも…!!僕は確かにあの時あの作品に何か…を感じたんです!!」


ヨシアキ「何が言いたい」



マサ「僕を…僕を…!!あなたの弟子にしてください!!削り鰹の道に、僕も着いて行かせてください!!」



ヨシアキ「…言ったろ。俺はもう引退してるんだ」


マサ「それでもあなたの削り鰹に対する心は本物です!!」


そう言った瞬間、ヨシアキの拳がマサの顔面をとらえていた。


マサ「ガフッ!!」


ヨシアキ「うるせぇ!!昨日の今日会ったばかりのお前みたいな野郎が!!知ったようにべらべら喋ってんじゃねぇ!!」


マサ「だって…」


ヨシアキ「はぁ…はぁ…!」


マサは体を起こしゆっくりとした口調でこう言った。


マサ「あなたは確かに引退したのかもしれません…でも…削る事が嫌いだとは一言も言っていませんよね…」


ヨシアキ「…っ!」


マサ「削る事が嫌いなら…工場なんて辞めているはずです…もしも他に仕事が無くて、仕方なく工場を続けていたとしても、あんなに大事そうに作品を扱うことはできないです…」


ヨシアキ「…」


マサ「僕があなたの作品に触れようとしたあの時…庇ったあなたの目は大事な物を守る目をしていました」


それだけ聞くと、ヨシアキは無言で工場の扉を閉めた。

マサはそれを見守る事しかできなかった。

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