表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「幼なじみは最強なのに、俺だけ無能だと思われていたが――実は“規格外”の力に誰も気づいていない」  作者: まちゃ粉
違和感

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/40

第8話 正常ではない世界

違和感は、最初からあった。

 けれど、それを“違和感”だと認めた瞬間に、何かが壊れる気がして——サクヤはずっと目を逸らしていた。

「なあサクヤ、聞いてるか?」

 レオの声に、はっとする。

「あ、ああ……聞いてる」

 いつも通りの昼下がり。

 いつも通りの帰り道。

 幼なじみの三人と並んで歩く、この何気ない時間。

 ——の、はずだった。

「でさ、昨日も言ったけどさ!」

「……昨日も?」

 サクヤは思わず聞き返す。

「おう、言っただろ? 俺の新しい剣技の話」

 レオは当然のように笑う。

 だが――サクヤの中で、何かが引っかかる。

(……昨日?)

 そんな話、聞いた覚えがない。

「ねえサクヤ」

 今度はリンが覗き込んでくる。

「ぼーっとしてるよ? 大丈夫?」

「いや……」

 大丈夫、と言いかけて、言葉が止まる。

 リンの笑顔が——どこか“薄い”。

 感情が乗っていない。作られたみたいに、整いすぎている。

「……ねえサクヤ」

「……どうした?」

「大丈夫?」

 同じ言葉。

 同じ声色。

 同じ角度。

 さっきと——まったく同じだった。

「……っ」

 背筋に冷たいものが走る。

(おかしい)

(——やっぱり、おかしい)

 その瞬間だった。

 ——ピシッ。

 何かが、ひび割れるような音。

「……?」

 視界の端で、景色が歪んだ。

 建物の輪郭がぐにゃりと曲がる。

 空の色が一瞬だけ、異様なノイズを帯びる。

 そして——音が、止まった。

 レオの口が動いている。リンも何か言っている。

 でも、何も聞こえない。

 まるで世界から“音”だけが削ぎ落とされたみたいに。

「……なんだ、これ」

 自分の声すら、やけに遠い。

 足音も、風も、何もかもが消えている。

 ただ一つ。

 ——“違和感”だけが、はっきりとそこにあった。

 次の瞬間。

「サクヤ」

 声が、戻る。だがそれは——

「サクヤ」

「サクヤ」

「サクヤ」

 同時に、重なって聞こえた。

「……っ!?」

 振り向く。

 レオがいた。リンがいた。レイがいた。

 ——そして。

 三人とも、同じ顔で、同じ表情で、同じ角度で、こちらを見ていた。

「サクヤ」

 ぴたりと揃った声。

 その瞳には——感情がなかった。

「……お前ら」

 一歩、後ずさる。

「何なんだよ、それ……」

 レオが口を開く。

「何なんだよ、それ……」

 同じ言葉を、同じように繰り返す。

 リンも、レイも。

「何なんだよ、それ……」

 ——壊れている。

 そう理解した瞬間、世界がさらに歪んだ。

 空間に走る“線”。ひびのようなノイズが至る所に現れる。

 まるで、この世界そのものに亀裂が入っているかのように。

「……っ」

 心臓が早鐘のように鳴る。

 逃げなきゃいけない。でも、どこに?

 ここは——現実のはずなのに。

 そのとき。

 リンの身体が、不自然に傾いた。

「……サクヤ」

 腕がぎこちなく持ち上がる。

 空気が震える。魔力——だが、明らかに制御を失っていた。

「やめろ……リン!」

 止めようと一歩踏み出す。だが、足が動かない。

 世界が——遅くなる。

 いや、違う。

 “自分だけが”、速くなっている。

 音が消える。景色が引き伸ばされる。

 すべてがスローモーションに変わる。

 その中で、サクヤは“それ”を見た。

 ——ズレ。

 人の輪郭から、わずかにずれた“影”。

 動きと合っていない、別の何か。

 空間に走るノイズの線。

 すべてが——見える。

「……見える」

「……ズレてる」

 理解した瞬間、手が勝手に動いた。

 リンへと伸ばした手が——その“ズレ”に触れる。

 ビシッ。

 何かが、はまる音。

 瞬間、暴走しかけていた魔力が、ぴたりと止まった。

「……え?」

 リンの瞳に、感情が戻る。

 時間が元に戻る。

 風の音、足音——世界のすべてが一気に押し寄せてくる。

「今の……なに?」

 リンが呟く。

 レオがサクヤを見る。

「サクヤ……お前、今……」

 レイは静かに目を細めた。

「——気づいたのか?」

「……っ」

 サクヤは息を呑む。

 視界の端で、まだ消えきっていない“ズレ”が微かに揺れていた。

(もう……逃げられない)

 これは、気のせいなんかじゃない。

 この世界は——正常じゃない。

 ——そして自分は、それを“見てしまった”。

 ***

 ——もう、気のせいじゃない。

「第一章 完」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ