第7話「制御の代償」
放課後。
人気のない森の奥。
サクヤとリンは向かい合っていた。
「ここなら大丈夫」
「……だな」
周囲に人の気配はない。
ここなら、多少暴れてもバレない。
「じゃあ、昨日の続き」
リンが真剣な表情で言う。
「まずは“出しすぎない”こと」
「ああ」
「次に、“止める”」
シンプルだが難しい。
「やってみて」
サクヤはうなずく。
目を閉じる。
“それ”に触れる。
今度は、さっきより少しだけ多く。
押し出す。
空気が震える。
地面の葉が揺れる。
「……ここ」
止める。
成功。
「いい感じ」
リンが評価する。
「じゃあ、少しずつ上げてく」
何度も繰り返す。
少し出す。
止める。
また出す。
止める。
そのたびに——
ドクン……
ドクン……
脈が強くなる。
「……っ」
息が荒くなる。
「無理しないで」
リンが言う。
「いや、まだいける」
サクヤは続ける。
ここで止めたくなかった。
(やれる)
そんな感覚があった。
さらに引き出す。
空気が歪む。
地面が軋む。
「……これ、やばいかも」
リンが呟く。
そのとき——
ドクンッ!!
一気に跳ね上がる。
「っ!!」
制御が、外れる。
ドゴォッ!!
地面が大きく抉れる。
衝撃が広がる。
「サクヤ!!」
「ぐっ……!」
止まらない。
また溢れる。
(くそ……!)
抑え込もうとする。
でも——
さっきより強い。
明らかに。
「なんで……」
そのとき、気づく。
(増えてる……?)
使うたびに、強くなっている。
リンの言葉がよぎる。
——“使うほど強くなる”
「最悪だな……!」
苦笑する余裕すらない。
「抑えて!!」
リンの声。
サクヤは必死に押さえ込む。
内側へ。
深く。
強く。
「っ……!!」
数秒。
いや、もっと長く感じた。
そして——
静まる。
「はぁ……っ」
膝をつく。
息が荒い。
「……大丈夫?」
リンが近づく。
今度は弾かれない。
「……ああ」
でも、顔は青い。
「これ……」
リンが呟く。
「想像より危ない」
「だな」
サクヤも同意する。
「制御できるようにはなってるけど」
「同時に強くなってる」
完全に一致した認識。
「……詰んでない?」
「詰んでるかもな」
軽く言うが、笑えない。
そのとき。
風が吹く。
妙に冷たい風。
「……?」
リンが違和感に気づく。
「今の……」
「どうした」
「誰か、見てる感じ」
空気が張り詰める。
サクヤも周囲を見る。
でも——誰もいない。
「気のせい……じゃない」
リンの声は真剣だった。
その直後。
遠くの木の影で——
何かが、わずかに動いた。
「……っ!」
サクヤが振り向く。
だが、その時にはもう何もない。
「……いたよね」
「ああ」
確信。
「……やばいかも」
リンが呟く。
その予感は、間違っていなかった。
遠く離れた場所。
同じく、森の外。
フードを被った人物が一人。
「……対象、確認」
小さく呟く。
その目は冷静だった。
「成長速度、危険域」
短く記録する。
そして——
「回収対象に指定」
その一言で、
サクヤの運命は大きく動き始めていた。




