↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「幼なじみは最強なのに、俺だけ無能だと思われていたが――実は“規格外”の力に誰も気づいていない」  作者: まちゃ粉
静かな波紋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/75

第65話「数」

翌日。

 サクヤは森の中に立っていた。

 昨日とは違う。

 身体の疲労は残っている。

 腕も重い。

 足も痛い。

 それでも――

「……昨日より動ける」

 ガルドが少し離れた場所に立っている。

「なら、次だ」

「次?」

「ああ」

 ガルドが指を鳴らす。

 その瞬間。

 森の奥から、何かが飛び出してきた。

「……!」

 一体。

 四足の魔物。

 サクヤは構える。

 魔物が跳ぶ。

「――!」

 見える。

 前足。

 重心。

 着地点。

 サクヤは横へ避けた。

 爪が空を切る。

「よし」

 そのまま拳を叩き込む。

 ――ドンッ!

 魔物が吹き飛ぶ。

 サクヤは追撃しようとする。

 その瞬間。

「――!」

 背後。

 別の気配。

 振り向く。

「二体目……!」

 もう一体の魔物が襲いかかってきた。

 サクヤは身体を捻る。

 避ける。

 だが――

「ぐっ!」

 肩を掠めた。

 そのまま転がる。

「……っ」

 立ち上がる。

 最初の魔物も起き上がっていた。

「……二体か」

『一体なら余裕だったのにな』

 ノクスの声。

「黙れ」

『どうした?』

『見えなくなったか?』

「……見えてる」

『なら、なんで喰らった?』

「……」

 サクヤは魔物を見る。

 一体目。

 二体目。

 両方の動き。

 片方が前へ。

 もう片方が横へ回る。

「……!」

 左右。

 同時。

 サクヤは一体目を避ける。

 その瞬間、二体目の爪が迫る。

「――っ!」

 腕で受ける。

 身体が吹き飛ぶ。

 木に背中をぶつける。

「ぐっ……!」

『ほらな』

 ノクスが笑う。

『一つしか見てねぇ』

「……違う」

『何が違う?』

「二つとも見てる」

『見てるだけだろ』

 サクヤは歯を食いしばる。

「……!」

 魔物が同時に迫る。

 サクヤは目を動かす。

 右。

 左。

 右。

 左。

 情報が多すぎる。

 動きを追う。

 追う。

 追う。

 ――間に合わない。

「くそっ!」

 攻撃を避ける。

 だが次の攻撃が来る。

「――!」

 拳で弾く。

 もう一体が迫る。

 蹴る。

 しかし、その隙に背後へ回られる。

「しまっ――」

 ――ドンッ!

 背中に衝撃。

 地面を転がる。

「……っ!」

 サクヤは起き上がる。

 息が荒い。

 魔物は二体。

 まだ立っている。

『数が増えりゃ、見えるだけじゃ足りねぇ』

「……」

『全部追おうとするから遅れる』

 サクヤは眉をひそめる。

「……じゃあ、どうしろってんだ」

『知らねぇよ』

「……チッ」

『自分で考えろ』

 サクヤは魔物を見る。

 そして――

 目を細める。

 一体目を見る。

 動く。

 二体目を見る。

 動く。

 だが。

 ――完全には見ない。

「……」

 サクヤは視線を少し落とした。

 魔物そのものではなく。

 周囲を見る。

 足音。

 土の揺れ。

 木々の動き。

 空気。

「……」

 右から来る。

 左も来る。

 なら――

「同時に避ける」

 サクヤが動いた。

 一体目の攻撃を躱す。

 そのまま身体を回転。

 二体目の攻撃も紙一重で避ける。

「――!」

 そのまま一体目へ拳。

 ――ドンッ!

 さらに二体目へ蹴り。

 ――バキッ!

 二体が吹き飛ぶ。

「……はぁ……」

 サクヤは息を整える。

 だが。

 まだ終わっていない。

 魔物が立ち上がる。

「……まだかよ」

 構える。

 その瞬間。

 ガルドの声が響いた。

「そこまでだ」

 魔物が止まる。

 ガルドが二体を下がらせる。

 サクヤはその場に立ったまま、荒い息を吐く。

「……今の」

 ガルドを見る。

「少しだけ見方が変わったな」

「……」

「敵そのものを追うな」

 サクヤは黙って聞く。

「周囲にある情報を拾え」

「……全部を見るんじゃなくて」

「ああ」

「必要なものだけ……」

「選べ」

 サクヤは拳を見る。

 まだ震えている。

 だけど。

 昨日より少しだけ――

 見える世界が広くなった気がした。

『……』

 ノクスは何も言わなかった。

 少しだけ間を置いて。

『まあ……悪くねぇ』

「……お前に褒められると気持ち悪い」

『褒めてねぇよ』

「じゃあ黙ってろ」

『はいはい』

 サクヤは前を見る。

 森の奥。

 まだ先がある。

 そして――

 その先には。

 今までとは比べ物にならないほどの戦いが待っている。

「……もっとだ」

 小さく呟く。

「もっと見えるようにする」

 ガルドは何も言わなかった。

 ただ――

 少しだけ口元を緩めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。