↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「幼なじみは最強なのに、俺だけ無能だと思われていたが――実は“規格外”の力に誰も気づいていない」  作者: まちゃ粉
静かな波紋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/75

第60話「稽古」

森の奥。

 サクヤは拳を握っていた。

 目の前に立つのは、師匠――ガルド。

「来い」

 短い言葉。

「……ああ」

 サクヤが踏み込む。

 拳を振り抜く。

 ――ヒュッ。

 空を切った。

「……!」

 ガルドは、ほんの僅かに身体をずらしている。

 サクヤはすぐに二撃目。

 ――ヒュッ。

 また避けられる。

「チッ!」

 三撃目。

 今度は蹴り。

 ガルドはそれすらも軽くかわした。

「遅い」

「……!」

 次の瞬間。

 ――ドンッ!!

「ぐっ……!」

 腹に拳が入る。

 サクヤの身体が吹き飛び、地面を転がった。

「……っ」

 痛みに顔を歪めながら立ち上がる。

「まだだ」

「そうだ」

 ガルドは構えたまま動かない。

「来い」

「……舐めんな!」

 再び踏み込む。

 拳。

 蹴り。

 肘。

 連続して攻撃する。

 だが――

 当たらない。

 一発も。

 そして。

 ――ドンッ!!

「がっ……!」

 また吹き飛ばされる。

 地面に手をつく。

「……くそ」

『くくっ』

 胸の奥から声が響く。

『見事なくらいボコボコだな』

「……黙れ」

『あれだけ威勢よく突っ込んで、全部避けられてやがる』

「うるせぇ」

『観測者様が聞いて呆れるぜ』

「……!」

 サクヤは立ち上がる。

 ガルドが静かに見ている。

「何を焦っている」

「……別に」

「嘘だな」

 サクヤは黙る。

「お前は攻撃を当てようとしすぎている」

「……」

「相手を見る前に、自分の攻撃を見ている」

 サクヤの表情が変わる。

「……自分の攻撃を?」

「そうだ」

 ガルドが構える。

「もう一度来い」

 サクヤは歯を食いしばる。

「……分かった」

 踏み込む。

 今度は拳を振り上げない。

 相手を見る。

 ガルドの足。

 肩。

 重心。

 ――動いた。

「そこだ!」

 サクヤが踏み込む。

 だが。

 ――ドンッ!!

「ぐっ……!」

 また腹に入った。

 サクヤは膝をつく。

『くくくっ』

「……笑うな」

『いやぁ、最高だな』

「……」

『今の、お前が完全に読まれてたぞ』

「分かってる……!」

 サクヤが顔を上げる。

『じゃあ何で食らってんだ?』

「……」

 答えられない。

 ガルドは静かに言った。

「まだ見えていない」

「……何が」

「相手の次だ」

 サクヤは拳を握る。

 悔しい。

 自分は強くなっていると思っていた。

 歪みも以前より見える。

 力も増えた。

 それでも――

 目の前の男には、一度も届かない。

「……もう一回」

 立ち上がる。

 ガルドが僅かに笑った。

「来い」

 * * *

 同じ頃。

 レオもまた、地面に転がっていた。

「……くそっ!」

 大剣を杖代わりに立ち上がる。

「まだやるか?」

 バルガスが問う。

「当たり前だ!」

 レオが吠える。

 大剣を構える。

「俺は……最強なんだ!」

「なら――」

 バルガスが構える。

「最強らしく立て」

 レオが踏み込む。

 ――ズドンッ!!

 大剣がぶつかる。

 レオの身体が押し返される。

「ぐっ……!」

 それでも踏みとどまる。

「まだだ!」

 * * *

 レイも刀を握っていた。

 シオンの攻撃を読む。

 次。

 その次。

 さらに先。

 だが――

「遅い」

 木刀が止まる。

「……!」

 レイの額に汗が浮かぶ。

「考えすぎだ」

「……分かっている」

「なら、直せ」

「……!」

 レイは再び構えた。

 * * *

 雪は目を閉じている。

 周囲の魔力。

 風。

 木々。

 生命。

 その全ての中から、ひとつを探す。

「……」

 見つからない。

「まだ」

 セレナが言う。

 雪は集中する。

 やがて――

「……いた」

 僅かな違和感。

 雪が目を開く。

 セレナが頷いた。

「少しずつね」

「……はい」

 * * *

 夕方。

 サクヤはまた地面に倒れていた。

「……はぁ……はぁ……」

 身体中が痛い。

 それでも立ち上がる。

『まだやんのか?』

「……やる」

『懲りねぇな』

「……うるせぇ」

『くくっ』

 ノクスは笑う。

『でも――』

 一瞬だけ声が低くなる。

『さっきよりはマシだったぞ』

 サクヤが黙る。

「……」

 そしてガルドを見る。

「……もう一回だ」

 ガルドは頷いた。

「来い」

 サクヤは構える。

 まだ届かない。

 まだ勝てない。

 それでも――

 ここで止まるつもりはなかった。

 遠く離れた場所でも。

 レオ、レイ、雪もまた。

 同じように、それぞれの壁と向き合っていた。

 四人ともまだ知らない。

 この厳しい日々が――

 いつか、自分たちの強さを大きく変えることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。