表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「幼なじみは最強なのに、俺だけ無能だと思われていたが――実は“規格外”の力に誰も気づいていない」  作者: まちゃ粉
違和感

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/40

第4話「壊れかけの力」

「……サクヤ、それ」

リンの視線は、地面の抉れた跡に釘付けだった。

夜の訓練場。

静寂の中で、その傷跡だけが異様に浮いている。

「本当に、わからないの?」

もう一度、同じ問い。

サクヤは答えられない。

わからないのは本当だ。

でも——

(使えた)

その感覚だけは、はっきり残っている。

「……さっき、ちょっとだけ」

言葉を選びながら口を開く。

「なんか、出た」

「“なんか”って……」

リンの眉がわずかに寄る。

当然の反応だった。

魔法でもない。剣技でもない。

説明のしようがない現象。

「もう一回、できる?」

その一言に、空気が張り詰める。

サクヤは少しだけ迷って——

「……たぶん」

と答えた。

本当は、「できる」と言い切れた。

さっき頭に流れ込んできた感覚。

あれをなぞればいい。

それだけでいい。

(……なんでわかるんだよ)

自分でも気味が悪い。

でも、体はもう理解している。

サクヤはゆっくりと手を前に出した。

「少し離れてろ」

「うん」

リンが後ろへ下がる。

その距離を確認してから、

サクヤは目を閉じた。

——沈める。

意識を、胸の奥へ。

あの“脈”を探す。

ドクン——

すぐに見つかる。

まるで、待っていたかのように。

「……っ」

それに触れる。

押し出す。

前へ。

「——出ろ」

瞬間、

空気が歪む。

ドゴォッ!!

さっきと同じ、いやそれ以上の衝撃。

地面が抉れる。

土が舞い上がる。

「……やっぱり」

リンの声が小さく漏れる。

だが——

異変は、それだけじゃなかった。

ドクンッ!!

「っ……!」

強く脈打つ。

さっきよりも、明らかに強い。

「サクヤ!?」

リンの声が近くなる。

でも、意識が少しだけ遠のく。

(……なんだこれ)

体の奥が熱い。

いや——

熱いなんてものじゃない。

焼けるような感覚。

「ぐっ……!」

膝が崩れる。

手をつく。

息が荒くなる。

それでも——

止まらない。

ドクンッ!!

ドクンッ!!

脈打つたびに、“何か”が溢れてくる。

「やば……」

思わず、呟く。

これはまずい。

本能的にそう感じた。

(止めないと……)

でも、止め方がわからない。

さっきは「出す」ことしか考えていなかった。

「サクヤ、落ち着いて!」

リンが肩に手をかける。

その瞬間——

バチッ!!

「っ!?」

火花のようなものが弾けた。

リンの手が弾かれる。

「痛っ……!」

「リン!?」

思わず顔を上げる。

リンは驚いた顔で、自分の手を見ていた。

触れただけなのに、弾かれた。

まるで——

“拒絶された”みたいに。

「……近づくな」

サクヤは思わずそう言った。

声が、少しだけ低くなる。

自分の声じゃないみたいだった。

「でも——」

「いいから!!」

思わず、強く言ってしまう。

空気が震える。

その瞬間——

ドンッ!!

見えない衝撃が、周囲に広がった。

地面が揺れる。

砂が跳ねる。

リンの体が、後ろへ押し出される。

「きゃっ……!」

「っ……!」

やってしまった。

明らかに、今のは自分のせいだ。

(違う、俺は——)

やろうとしたわけじゃない。

でも、出た。

勝手に。

制御できていない。

「はぁ……はぁ……」

呼吸が荒い。

視界が、わずかに歪む。

このままじゃ——

「サクヤ……それ、やばいよ」

リンの声が、少しだけ震えていた。

恐怖。

初めて向けられる感情。

それが、はっきりと伝わる。

「……わかってる」

短く答える。

でも、どうしようもない。

「止める方法、わかる?」

「……わからない」

沈黙が落ちる。

夜の空気が、重くなる。

そのときだった。

遠くから、足音が聞こえた。

「……なんの音だ?」

「今の衝撃じゃない?」

複数人の気配。

このままだと——見つかる。

「サクヤ、ここ離れよう」

リンが言う。

でも——

「……動けない」

正直に答える。

体が言うことを聞かない。

それどころか、

まだ“溢れている”。

ドクンッ——

また、脈打つ。

「っ……!」

地面が、わずかに軋む。

「……これ、まずい」

リンの顔が真剣になる。

状況を理解している。

このままじゃ、

ただの“覚醒”じゃ済まない。

「サクヤ、聞いて」

リンは一歩だけ近づいて、

でも距離を保ったまま言う。

「それ、“外に出そうとしないで”」

「……え?」

「逆。中に抑えるの」

初めての指示だった。

でも——

(できるのか……?)

わからない。

けど、やるしかない。

「……やってみる」

目を閉じる。

さっきとは逆。

押し出すんじゃない。

押さえ込む。

内側へ。

沈める。

「……っ!!」

強烈な抵抗。

まるで、暴れる何かを無理やり押さえつけるような感覚。

「ぐっ……!」

膝が震える。

でも——

少しずつ、

ほんの少しずつ、

脈が弱まっていく。

ドクン……

ドクン……

「……いける、そのまま!」

リンの声が届く。

さらに押し込む。

深く、深く。

そして——

「はぁ……っ」

静かになった。

完全じゃない。

でも、さっきまでの暴走は収まっている。

夜の空気が、元に戻る。

「……止まった?」

「……たぶん」

サクヤはゆっくりと顔を上げた。

リンと目が合う。

その表情は——

安心と、不安が混ざっていた。

「……ねえサクヤ」

「なんだよ」

「それ、多分……普通の力じゃないよ」

静かな声。

でも、はっきりと断言する。

サクヤは、苦笑した。

「だろうな」

否定できるわけがない。

こんなもの、見たことも聞いたこともない。

そして——

また、胸の奥で小さく脈打つ。

まるで、

“まだ終わっていない”とでも言うように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ