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「幼なじみは最強なのに、俺だけ無能だと思われていたが――実は“規格外”の力に誰も気づいていない」  作者: まちゃ粉
静かな波紋

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第35話「残された熱」

静寂が、遅れて戻ってくる。

さっきまで確かに“いた”はずの気配が、嘘みたいに消えていた。

「……いや待てって」

レイが頭を抱える。

「何なんだよあいつ!?急に出てきて、ボコって、キスして帰るって何!?」

「意味わかんねぇにも程があるだろ……」

レオも珍しく困惑していた。

その声が、遠くに聞こえる。

サクヤは動かない。

仰向けのまま、天井を見ている。

(……なんだよ、あいつ)

ゆっくりと、唇に触れる。

残っている。

感触が。

一瞬だったはずなのに、やけに鮮明に。

「おい、サクヤ……大丈夫か?」

レイの声。

「……あぁ」

短く返す。

だが――

違和感は消えない。

胸の奥。

いつもよりも、強く。

ドクン、と脈打つ“何か”。

(……うるせぇ)

イラつく。

理由が分からないのが、余計に。

「“また飲まれるよ?”」

ふと、あの声が蘇る。

「“こっち側だ”」

「……は、」

鼻で笑う。

「ふざけんな」

俺は――

俺だ。

そう思った、その瞬間。

ざわっ

足元の影が、揺れた。

「……っ?」

一瞬だけ。

黒が、濃くなる。

まるで意思を持ったみたいに、蠢く。

「おい……今の……」

レオが気づく。

レイも息を呑む。

サクヤは、無言で影を見下ろす。

(……なんだよ)

ドクン

また、脈打つ。

さっきよりも、近い。

内側から。

「――ねぇ」

耳元で、声がした気がした。

反射的に振り向く。

誰もいない。

「……は?」

レイが怪訝そうな顔をする。

「どうした?」

「……いや」

気のせい。

そう言いかけて、止まる。

今のは――

あいつの声に、似ていた。

「……チッ」

舌打ち。

立ち上がる。

体はもう動く。

だが。

完全じゃない。

どこかが、まだ“残ってる”。

「今日はもう戻るぞ」

短く言う。

これ以上ここにいるのは、良くない気がした。

レイとレオも頷く。

だが。

歩き出そうとした、その時。

ドクン

強く、脈打つ。

「……っ!」

一瞬、視界が歪む。

黒が、滲む。

「サクヤ!?」

レイの声が遠い。

その奥で――

“それ”は、確かに笑った。

「――いいね」

小さく。

楽しそうに。

「ちゃんと、残ってる」

「……っ、誰だ……!」

思わず声が出る。

返事はない。

だが。

確信だけが残る。

(……あいつ……)

クロノ・ヴェイル。

消えたはずの存在。

なのに。

「……また来る気かよ」

吐き捨てるように呟く。

胸の奥の“黒”が、静かに脈打つ。

まるで――

それを、待っているみたいに。

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