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「幼なじみは最強なのに、俺だけ無能だと思われていたが――実は“規格外”の力に誰も気づいていない」  作者: まちゃ粉
静かな波紋

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第33話「観測の余韻」

風が、まだ残っている。

 砕けた地面。

 抉れた空間。

 戦いの痕跡だけが、そこにあった。

「……本当に、終わったんだよね」

 リンが、小さく呟く。

 返事は、すぐには来ない。

 サクヤは立ったまま、空を見ている。

 何もないはずのそこに——

 わずかな“ズレ”を見ていた。

「サクヤ?」

 呼ばれて、視線を落とす。

「……ああ。一応な」

 短い返事。

 だが、その目はまだ戦っている。

 内側で。

(残ってる)

 胸の奥。

 微かに蠢く“何か”。

 さっき潰したはずのものの、残滓。

 完全には消えていない。

「なあ」

 レオが、壁にもたれながら口を開く。

「さっきの、あれ……なんだったんだ?」

 レイも視線を向ける。

「闇……ってわけでもなさそうだったな」

 一瞬の沈黙。

 サクヤは、ゆっくり息を吐く。

「……分からねぇ」

 正直に言う。

「でも」

 視線が、わずかに逸れる。

 空間の一点。

 そこだけが、僅かに歪んで見える。

「“見えてた”」

 一歩、踏み出す。

 手を伸ばす。

 何もない場所に触れる。

 ——ぐにゃり、と。

 空気が、歪む。

「……っ」

 リンが息を呑む。

 サクヤはそのまま指を引く。

 歪みが、細い線のように引き延ばされる。

 そして——消える。

「今も、ある」

 低く呟く。

「闇じゃない」

 一瞬、間を置いて。

「……“歪み”だ」

 その言葉に、誰もすぐには反応できない。

 理解が追いつかない。

 だが——

 “普通じゃない何か”があることだけは、全員が感じていた。

「歪み……」

 リンが、小さく繰り返す。

 サクヤは答えない。

 ただ、空を見上げる。

 その時。

 ——ピシッ

 微かな音。

 誰にも聞こえないほどの。

 だが。

 サクヤだけが、反応する。

「……またか」

 遠く。

 ビルの向こう。

 空の一部が、ほんの一瞬だけ——歪む。

 黒が、滲む。

 すぐに消える。

 だが、確かにそこにあった。

(終わってねぇ)

 確信に変わる。

「おい、どうした」

 レオの声。

 サクヤは、答えない。

 ただ見ている。

 “あっち側”を。

 ——離れた場所。

 高いビルの屋上。

 一人の影が、街を見下ろしていた。

 風が吹く。

 その視線は、ただ一点。

 サクヤを捉えている。

「……確認」

 小さく、呟く。

 誰に向けたものでもない声。

「やっとだ」

 わずかに、目を細める。

「遅いんだよ」

 意味の分からない言葉。

 そして——

「“鍵”」

 ぽつりと落とす。

 次の瞬間。

 少年の姿が、揺らぐ。

 まるで最初からそこにいなかったかのように、

 風景に溶けて、消えた。

「……行くぞ」

 サクヤが、短く言う。

「え?」

 リンが顔を上げる。

「どこに……?」

 少しだけ間を置いて。

「……とりあえず、戻る」

 日常へ。

 だが——

 もう、同じ日常じゃない。

 歩き出す。

 その背中で。

 サクヤは、ゆっくりと拳を握る。

「……全部、潰す」

 小さく。

 だが、確かな声で。

 戦いは終わっていない。

 むしろ——

 ここから始まる。

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