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「幼なじみは最強なのに、俺だけ無能だと思われていたが――実は“規格外”の力に誰も気づいていない」  作者: まちゃ粉
残された世界

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第20話「触れた先の“異界”」

伸ばされた“手”は、迷うように揺れていた。

 それでも確かに――リンへと向かっている。

「……サクヤ、なの?」

 問いに答えはない。

 だが、その存在は“そこにいる”。

 逃げるべきだと、本能が告げていた。

 あれは人ではない。

 触れてはいけない“何か”だと。

 それでも。

「……違う」

 リンは、小さく首を振った。

 ——知っている。

 あの鼓動を。

 あの気配を。

 あの、どうしようもなく優しい“揺らぎ”を。

「サクヤだよね」

 今度は、迷いなく言った。

 そして――

 ゆっくりと、手を伸ばす。

 震えは止まらない。

 怖くないわけがない。

 それでも。

 届かせると、決めたから。

 指先が、触れる。

 ——その瞬間。

「……っ!」

 世界が、反転した。

 音が消える。

 色が崩れる。

 重力さえ、意味を失う。

 視界のすべてが“黒”に塗り潰されていく。

「な、に……これ……」

 声が、遅れて届く。

 そこは、どこでもない場所だった。

 上も下も分からない。

 時間すら流れているのか曖昧な空間。

 ただ一つだけ、確かなものがある。

 ——目の前の存在。

「……サクヤ」

 黒に溶けかけた“それ”は、ゆっくりと輪郭を持ち始める。

 人の形。

 けれど、完全ではない。

 崩れ、揺らぎ、今にも消えそうな存在。

 それでも。

 その“目”だけは――

「……リン?」

 確かに、こちらを見ていた。

「っ……!」

 息が詰まる。

 その一言だけで、十分だった。

 届いた。

 ちゃんと、届いた。

「サクヤ……!」

 一歩、踏み出す。

 手を、強く握ろうとする。

 その瞬間。

 ——ドクン

 脈が、狂う。

「……っ!?」

 違う。

 これはさっき感じたものじゃない。

 もっと深くて、もっと重い――

 “何か別のもの”が、動いている。

 サクヤの身体が、大きく歪んだ。

「……ダメ、だ」

 掠れた声。

「来る、な……リン……!」

「え……?」

 次の瞬間。

 “それ”が、開いた。

 サクヤの背後。

 いや、彼の中から。

 底の見えない“黒”が、口を開けるように広がる。

 引きずり込まれる。

「きゃっ……!」

 リンの身体が、強く引かれる。

 足場はない。

 抵抗する場所もない。

 ただ、落ちる。

「サクヤ!!」

 叫ぶ。

 その手を、離さないように。

 だが。

「……来るな!!」

 サクヤが、叫んだ。

 その声と同時に。

 ——バチンッ!!

 衝撃。

 リンの身体が、弾き飛ばされる。

「……っ!」

 視界が白く弾けた。

 次の瞬間――

 元の世界に、戻っていた。

 地面に膝をつく。

 息が荒い。

「は……っ、は……っ……」

 目の前には、何もない。

 あの裂け目も。

 黒も。

 サクヤの姿も。

 全部、消えていた。

「……なん、で……」

 震える手を、見つめる。

 確かに、触れた。

 確かに、そこにいた。

 なのに。

「……っ」

 唇を噛む。

 悔しさが、込み上げる。

 ——でも。

「……まだ、いる」

 顔を上げる。

 さっきと同じ言葉。

 けれど、その意味はもう違う。

 確信に変わっていた。

「絶対に、取り戻す」

 その瞳に、迷いはない。

 あの“黒”の奥にいるなら。

 どれだけ深くても。

 どれだけ危険でも。

 ——必ず、手を伸ばす。

 もう一度。

 今度こそ、離さないために。

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