第18話「境界の先」
轟音。
レオの大剣とサクヤの拳がぶつかり、衝撃が地面を砕いた。
「……いいな、その力」
レオが笑う。
「やっと“戦える顔”になったじゃねぇか」
ドクン――
サクヤの胸の鼓動が、外へと滲み出る。
「まだだ」
低く呟く。
「こんなもんじゃ、足りない」
次の瞬間。
サクヤが踏み込む。
それだけで地面が崩れた。
ドンッ!!
レオの身体が吹き飛ぶ。
「ははっ!!」
空中で体勢を立て直し、着地。
「最高だな、おい!!」
再びぶつかる二人。
だが――
キィンッ!!
レイが割って入る。
「やりすぎだ、レオ!!」
「このままだと全員死ぬぞ!!」
その時だった。
ドクンッ!!
空気が止まる。
サクヤの周囲が歪み、景色がズレる。
「……なんだ、これ」
レイの声が低くなる。
リンは、一歩前に出ていた。
「……違う」
「これ、前の力じゃない」
サクヤが顔を上げる。
「見える」
その一言で、すべてが変わる。
「全部」
次の瞬間。
レイの刀が弾かれる。
レオの剣が逸れる。
「遅い」
ドンッ!!
二人が同時に吹き飛ぶ。
リンの鼓動が速くなる。
(知ってる……でも違う)
(あの時のサクヤじゃない)
「サクヤ!!」
叫ぶ。
「戻って!!」
その声だけが、届いた。
「……リン」
サクヤが名前を呼ぶ。
ほんの一瞬。
その目に“人間の色”が戻る。
「まだ――」
だが。
ドクンッ!!!!!!
鼓動がすべてを塗り潰した。
「……うるさい」
頭を押さえる。
「全部見えるのに」
「全部分かるのに」
「なんで、こんなに――」
バキッ
空間に、ヒビが入る。
「は……?」
レイが絶句する。
世界そのものが、歪んでいる。
「ダメ……それ以上は――」
リンの声が震える。
サクヤがゆっくり顔を上げる。
その目は、もう――
人間じゃない。
「……まだ足りない」
一歩。
「もっと強くならないと」
ヒビが広がる。
「全部、観えない」
そして――
ドォンッ!!!!!!
閃光。
崩壊。
沈黙。
煙が晴れる。
そこに、サクヤの姿はなかった。
「……消えた……?」
レイが呟く。
レオが空を見上げる。
「逃げたんじゃねぇな……あれは」
リンは動けなかった。
震える声で、呟く。
「……あれはもう」
一拍。
「私の知ってるサクヤじゃない」
風が吹く。
誰もいない中心。
壊れた地面だけが残る。
サクヤは消えた。
何もかもを壊して。
何も残さずに。
そして――
その日を境に。
世界は、少しずつ狂い始める。
第二章 完




