第17話「理解者の拒絶」
崩れた地面。
ひび割れた空気。
サクヤの胸の奥で、確かに“何か”が脈打っている。
ドクン――
ドクン――
それはもう痛みじゃない。
むしろ、心地よさに近かった。
「……サクヤ」
震えた声。
リンだった。
その瞳は、恐怖でも怒りでもない。
もっと別の感情――
“理解していたはずのものが壊れる瞬間”の目だった。
「……違う」
一歩、踏み出すリン。
「こんなの、私が知ってるサクヤじゃない」
サクヤはゆっくり顔を上げる。
「……ああ」
その声は、どこか冷たく変わっていた。
「変わったんだよ」
空気が歪む。
次の瞬間、サクヤの姿が消えた。
「っ――!」
レイが刀を抜く。
キィン!!
火花が散る。
一瞬で間合いに入ったサクヤの拳を、レイが受け止めていた。
「正気かよ、サクヤ!!」
「正気だよ」
淡々とした声。
だが――
その力が、明らかにおかしい。
ズンッ!!
衝撃が地面を砕く。
レイの足元が沈む。
「ぐっ……!」
押されている。
完全に。
その時――
「やめて!!」
リンの声が響いた。
一瞬だけ、サクヤの動きが止まる。
リンは震える手で、サクヤを指さした。
「……覚えてる?」
「最初に、力使った時」
「私だけ、気づいたよね」
沈黙。
「“誰にも言うな”って」
「約束したよね」
空気が揺れる。
サクヤの胸の鼓動が強くなる。
ドクン――!!
「……ああ」
小さく、答える。
「守ってきたんだよ、ずっと!!」
リンの声が震える。
「サクヤのこと、誰にも言わなかった!!」
「ずっと、一人で抱えてたの!!」
一歩、近づく。
「だから……分かってるつもりだった」
そして――
涙がこぼれる。
「でも……」
「それ、私の知らないサクヤだよ……!!」
静寂。
サクヤの中で、何かが揺れる。
だが次の瞬間――
その揺れを、力が押し潰した。
「……関係ない」
リンの目が見開かれる。
「理解とか、共有とか」
「そんなもんで、俺は止まらない」
そして――
ゆっくりと、拳を握る。
ドクン――!!!
「痛みが俺を強くする」
「なら――」
顔を上げる。
その目は、完全に変わっていた。
「このまま壊れた方が、強くなれるだろ」
ゾッとする沈黙。
「……サクヤ」
リンの声が、かすれる。
レイが歯を食いしばる。
「リン、下がれ」
刀を構える。
「こいつはもう――止めるしかねぇ」
その瞬間。
ゴォォォッ――!!
外から衝撃が走る。
「……遅れたな」
低い声。
振り返ると――
そこにいたのはレオ。
巨大な剣を肩に担ぎ、立っていた。
「状況は最悪ってとこか」
サクヤと、レイと、リンを見渡す。
「……面白ぇ」
剣を振り下ろす。
ドンッ!!
地面が砕ける。
「全員まとめて相手してやるよ」
サクヤが、わずかに笑った。
ドクン――
鼓動が、さらに強くなる。




