表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「幼なじみは最強なのに、俺だけ無能だと思われていたが――実は“規格外”の力に誰も気づいていない」  作者: まちゃ粉
観測者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/39

第16話「境界の向こう側」

――一歩。

 サクヤは、“向こう側”へ踏み込んだ。

 ドクン。

 胸の奥が、激しく脈打つ。

 視界が、反転した。

 上下も、前後も、意味を失う。

 ただ――

 “在る”。

 それだけが、理解できた。

「……ここが」

 声が、遅れて響く。

 自分のものなのに、どこか遠い。

 背後では。

「サクヤ!!戻れ!!」

 レイの叫びが聞こえていた。

 だが。

 遠い。

 届かない。

 ――いや。

 “必要ない”。

 今、サクヤの意識は。

 完全に“こちら側”にあった。

 ゆらり、と。

 “それ”が動く。

 形はない。

 輪郭もない。

 なのに、確かにそこにいる。

「……お前か」

 自然と、言葉が出た。

 答えはない。

 だが。

 視線だけが、返ってくる。

 “見られている”。

 理解した瞬間。

 ゾワッ――

 全身を、悪寒が走る。

 恐怖じゃない。

 拒絶でもない。

 もっと原始的な。

 ――“格の違い”。

「……っ」

 膝が、わずかに揺れる。

 だが。

 サクヤは、笑った。

「いいな」

 ドクン。

 鼓動が、さらに速くなる。

「やっと……触れられる」

 手を伸ばす。

 “それ”に向かって。

 瞬間――

 世界が、軋んだ。

 ギギギ、と。

 何かが悲鳴を上げる。

 限界を超えている。

 それでも。

 サクヤは、止まらない。

「サクヤ!!」

 現実側。

 レイが、飛び込んでいた。

 リンの魔法で“手”を押し退けながら。

「引きずり戻す!」

「無理……あれはもう……!」

 リンの声が震える。

 見えてしまったから。

 分かってしまったから。

 あれは――

 “触れてはいけない領域”。

「でも……!」

 レイは止まらない。

 刀を振り抜く。

 “手”を斬り裂き、道をこじ開ける。

 サクヤの元へ――

 届かせるために。

 その時。

 サクヤの指先が、“それ”に触れた。

 ――ドクン。

 鼓動が、止まる。

 次の瞬間。

 爆発した。

「――ぁ、あああああああああああああああッ!!」

 声にならない叫び。

 情報が、流れ込む。

 意味を持たない“理解”。

 世界の“外側”。

 存在の“定義”。

 観測される前の“在り方”。

「――ッ!!」

 脳が焼ける。

 視界が白く弾ける。

 それでも。

 サクヤは、笑っていた。

「……足りない」

 掠れた声。

「まだ……足りない……!」

 その瞬間。

 “それ”が、動いた。

 ほんのわずかに。

 触れ返した。

 ――現実。

 ドンッ!!

 衝撃が爆ぜた。

「っ!!」

 レイが吹き飛ぶ。

 リンの魔法がかき消される。

 空間が、崩れる。

「なに……今の……!」

 リンの顔が青ざめる。

 違う。

 さっきまでの“手”とは。

 次元が違う。

「サクヤが……」

 見てしまう。

 立っている。

 その中心に。

 だが。

 様子が、おかしい。

「……サクヤ?」

 呼びかける。

 ゆっくりと。

 サクヤが、こちらを向いた。

 その目は。

 ――何も映していなかった。

「…………ああ」

 ぽつり、と。

 声が落ちる。

「そうか」

 一歩、踏み出す。

 現実側へ。

 だがその動きは、どこか歪だ。

「……こっち、だったか」

「やめて」

 リンが、後ずさる。

 本能が拒絶する。

「それ以上、来ないで」

 サクヤは止まらない。

 ドクン。

 また、脈が打つ。

 今度は――外に漏れるように。

 空気が、震える。

「サクヤ!!正気に戻れ!!」

 レイが叫ぶ。

 立ち上がり、刀を構える。

 仲間に向けるには重すぎる刃。

 それでも。

 止めなければならない。

 だが。

 サクヤは、静かに言った。

「……邪魔だ」

 次の瞬間。

 レイの身体が、弾かれた。

「がっ……!?」

 触れていない。

 なのに、吹き飛ばされた。

「……なに、それ……」

 リンの声が震える。

 理解が追いつかない。

 力の質が、違う。

「サクヤ……あなた……」

 その言葉は。

 最後まで出なかった。

 なぜなら。

 サクヤが、完全に“別の何か”になりかけていると。

 理解してしまったから。

 ドクン。

 ドクン。

 ドクン。

 脈が、響く。

 世界に。

 現実に。

 侵食するように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ