第九話
「昔、あの辺りに住んでいた事を話した事があったろう?」
「はい、まあ……」
それは聞いた事がある。
先生は学生の頃、あの辺りに住んでいて、そこから親の都合で引っ越したと。まあ、それしか聞いてないけども。
先生は続ける。
◆第二章「Who are you?」◆
「小学校に入ってすぐ、新しい友達が出来たことがあった。二ヶ月と、短い期間だったがね。
その子が現れたのは突然だった。当時、週末になると、私は祖父の住んでるアパートに毎週通っていた。そのアパートの一階に、彼は住んでいた」
「それが……例のアパート?」
先生は首を振る。
「小学校の友達と遊んでいると、いつの間にかその子は近くにいて、一緒に遊びたいと言ってきた。私とその友達は特に断る理由もなくその子と一緒に遊んだ。帰る時間になって、また明日と約束してな。ある日から私は彼と二人で遊ぶようになった。時間さえ合えば、いつも。だが、その子はある日、いきなり引っ越すと言い出したんだ。
私は残念がったんだが、彼は次の引越し先を教えてくれた。それがあのアパートだったんだ。それからも、私は彼と遊んでいた。だが…………」
「…………だが?」
そう聞くと、先生はその記憶を正確に辿るように一瞬、沈黙した。
「彼はまた、姿を消した。それっきりだ。私は彼に会ったことはない」
「消えたって、家にもいなかったんですか?」
先生は静かに頷く。
「ああ、家はもぬけの殻だった。私はまた会えるかと、何度もアパートに足を運んだり、近くの公園でも待ったが、彼は二度と現れる事はなかった」
「………………………」
あまりにも呆気ない話の終わりに、オレは何も言えなかった。
せめて、いなくなるにしても先生に何か伝えればよかったのに。そう思ったのだが、先生はこちらを見て、口の端を歪ませて笑う。
「さて、ここまで半分」




