表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
睦月の幻  作者: 時計屋
第一章「睦月の幻〜Reunion and a Beginning〜」
6/21

第六話


気付くと、私は商店街の入り口に立っていた。

脇の方を見る。小さな喫茶店は閉じていた。

そうして、私は再び前を向き、歩き出す。

少しして見えてきた光景を見て、私は目を細めた。


「まあ、そうだよな」


途中、立ち止まる。商店街の店の全てはシャッターが閉じていた。

時刻は6時半過ぎ。当たり前だ、こんな時間に店など空いてる訳がない。

シャッターが閉じてる中には、もう何年も営業してない場所もあった。


おもちゃ屋はシャッターどころか、店そのものが崩れそうなくらい、ボロボロだ。

肉屋も半開きのシャッターの奥は、伽藍堂。

魚屋も、私達が最後に寄ったおやつ屋も、そもそも建物すらない。


「ああ、幻だ」


不思議な現象だった。

私は幻を見ていた。

この町が刻んでいた記憶を、私は()として見ていた。


恐らくは寂れて変わりゆくこの町を、私が悲しんだから。そして………


この町(お前)も、寂しかったのだろう?」


無人の商店街にそう語りかける。当然、答えは返ってこなかったが、それでいい。

ふと、携帯が震えた。どうやらメッセージを受信したらしい。

ロックを外して、メッセージの送り主の名前を見て、目を丸くして驚いて…………、微笑む。

(ああ、約束だもんな)

私は勝手に納得し、携帯を胸ポケットにしまってから、また歩き出す。


音は無い。心地よい静寂に身を預け、商店街の出口に立ち、振り返った。


「また、遊びに来るよ」




「………………先生」


全て聞き終えたオレは、あまりにも荒唐無稽な話を聞いて、やっと口を開く。


「ん?」


対して、先生はいつもの面持ち。だが、次にオレが何を言うか、手に取るように分かっているというような微笑を浮かべている。


「寝ぼけてた………とかじゃないんですか?」


なんとか、それだけを口にした。

だって、そうだろう。あり得ない、そんな事が現実に起きるはずがないじゃないか。

それを、先生は「かもな」とやっぱり気にすることなく言ってのけたのだ。

オレは、それでは止まらなかった。


「何処なんすか?」

「…………………」

「何処なんです、その神社と商店街。そんな場所あるなら、オレも行って――――――」

「内緒」

「はあ?!」


意地悪く笑って、こちらに背を向ける先生。だが………


「今はまだ、一人この胸に留めておきたい。そういう気分だ」


そう言った先生の言葉、その声音は、どこかひどく、そして清々しくも思えた。




その時の事を思い返し、今更ながらにオレは思う。

先生はきっと、本当にその不思議な空間にいて、その場所は会ったのだと。

そして、だからこそあの人は、あの町に戻る選択をしたのだろう。

自らも、町の記憶に在るために…………。





第一章・「睦月の幻〜Reunion and a Beginning〜」 完



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ