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睦月の幻  作者: 時計屋
第一章「睦月の幻〜Reunion and a Beginning〜」
4/17

第四話


「これは………いったい、何が」


目にした光景に、私は思わずそう零す。

私が目にした明かりは商店街の外れ………。

出入り口にひっそりと存在する小さな喫茶店、そこから漏れ出ていた。


入れる客の数など両手の指で数えられる程度という程に小さいが、店自体は海外にありそうな、アンティークな外観のお洒落な店だった。

窓は結露で曇っており、店内の様子は窺えないが、何人かの話し声が聞こえる。


「どうして………」


私は気でも狂ったのか?狐か狸に化かされたのか?と焦る。

有り得ないことだった。


何故なら、この店の老店主は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


一時期、奥さんである女性が切り盛りしていたが、年齢のこともあり、それもすぐに終わってしまった。

第一、そろそろ夜中の1時になる頃で、二重の意味であり得ないことだった。


それに、疑問はまだ尽きない。私は意を決して喫茶店を通り過ぎ、商店街の外れから入り口へと向かう。

そして私は、更に驚くことになる。


「――――――――――」


言葉を失う。商店街はまるで昼間のように活気づいていた。

顔に妙に影のかかった人達が愉しげに私の両脇を通り抜ける。子連れの夫婦、小学生達、仲のいい中年女性達、私のように一人でいる者や、自転車を降りて押す者……。


全て、私が幼い頃に見た光景そのままだった。

家族でやっている八百屋。

年老いた、名医と有名な医者の小さな病院。

子供の頃によく足を運んだおやつ屋。

頑固な爺さんが日が傾く前に開けるオンボロなおもちゃ屋。


薬局に家具屋、肉屋、餃子屋、歯医者、居酒屋……。

一度も足を運んだ事のない洋服屋にお茶屋に豆腐屋、魚屋。

息交う人々も、スピーカーから聞こえる宣伝も何もかも、あの頃から変わらない。


「……あれ、もしかして■■か?」

「あ、本当だ。おーい」

「え…………?」


二つの声、私の後ろにいたのは商店街の近くに住んでいる、双子の旧友だった。

周りの人々同様、顔には影がかかっていたが、その声を間違えるはずもない。


「こっちに戻ってきたのか?」

「あ、ああ……、初詣に」

「なんだよ、それなら連絡くらいくれよ。俺達も一緒に行ったのに」

「無茶言ってやんなよ。■■、中学の時に周りになーんにも言わず引っ越したんだからさ」

「あー、そうだったそうだった」

「いや、それは……!」


図星を突かれ、私は言葉が詰まる。二人の言う通り、私は親の仕事の都合でこの町を去り、隣県へと移った。

その事を、誰にも伝えないまま。


「……悪かった」

「………ぷ、く、…はははははは!!」

「いや、冗談、冗談だよ。悪い悪い、でも、本当にショックだったんだぜ?幼稚園からの付き合いなのにさ。何も言ってくれなかったのは」

「………本当にすまん」


素直に頭を下げて謝る。言われても仕方ない事だが、あの後周りにも色々と言われ、これでも反省しているのだ。

旧友達はひとしきり笑った後、私の肩をぽんぽん、と叩いた。


「いいよいいよ、俺達もからかい過ぎた、ごめんな。取り敢えずさ、通行人の邪魔になっちまうし、一緒に見て回ろうぜ」

「積もる話もあるだろうし、な?」

「ああ、そうだな……」


まるで、導くように前を歩く二人にようやく硬い笑みを浮かべて、私はそう返して後に続いた。

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