第四話
「これは………いったい、何が」
目にした光景に、私は思わずそう零す。
私が目にした明かりは商店街の外れ………。
出入り口にひっそりと存在する小さな喫茶店、そこから漏れ出ていた。
入れる客の数など両手の指で数えられる程度という程に小さいが、店自体は海外にありそうな、アンティークな外観のお洒落な店だった。
窓は結露で曇っており、店内の様子は窺えないが、何人かの話し声が聞こえる。
「どうして………」
私は気でも狂ったのか?狐か狸に化かされたのか?と焦る。
有り得ないことだった。
何故なら、この店の老店主は私が中学生の時に無くなって、閉店している。
一時期、奥さんである女性が切り盛りしていたが、年齢のこともあり、それもすぐに終わってしまった。
第一、そろそろ夜中の1時になる頃で、二重の意味であり得ないことだった。
それに、疑問はまだ尽きない。私は意を決して喫茶店を通り過ぎ、商店街の外れから入り口へと向かう。
そして私は、更に驚くことになる。
「――――――――――」
言葉を失う。商店街はまるで昼間のように活気づいていた。
顔に妙に影のかかった人達が愉しげに私の両脇を通り抜ける。子連れの夫婦、小学生達、仲のいい中年女性達、私のように一人でいる者や、自転車を降りて押す者……。
全て、私が幼い頃に見た光景そのままだった。
家族でやっている八百屋。
年老いた、名医と有名な医者の小さな病院。
子供の頃によく足を運んだおやつ屋。
頑固な爺さんが日が傾く前に開けるオンボロなおもちゃ屋。
薬局に家具屋、肉屋、餃子屋、歯医者、居酒屋……。
一度も足を運んだ事のない洋服屋にお茶屋に豆腐屋、魚屋。
息交う人々も、スピーカーから聞こえる宣伝も何もかも、あの頃から変わらない。
「……あれ、もしかして■■か?」
「あ、本当だ。おーい」
「え…………?」
二つの声、私の後ろにいたのは商店街の近くに住んでいる、双子の旧友だった。
周りの人々同様、顔には影がかかっていたが、その声を間違えるはずもない。
「こっちに戻ってきたのか?」
「あ、ああ……、初詣に」
「なんだよ、それなら連絡くらいくれよ。俺達も一緒に行ったのに」
「無茶言ってやんなよ。■■、中学の時に周りになーんにも言わず引っ越したんだからさ」
「あー、そうだったそうだった」
「いや、それは……!」
図星を突かれ、私は言葉が詰まる。二人の言う通り、私は親の仕事の都合でこの町を去り、隣県へと移った。
その事を、誰にも伝えないまま。
「……悪かった」
「………ぷ、く、…はははははは!!」
「いや、冗談、冗談だよ。悪い悪い、でも、本当にショックだったんだぜ?幼稚園からの付き合いなのにさ。何も言ってくれなかったのは」
「………本当にすまん」
素直に頭を下げて謝る。言われても仕方ない事だが、あの後周りにも色々と言われ、これでも反省しているのだ。
旧友達はひとしきり笑った後、私の肩をぽんぽん、と叩いた。
「いいよいいよ、俺達もからかい過ぎた、ごめんな。取り敢えずさ、通行人の邪魔になっちまうし、一緒に見て回ろうぜ」
「積もる話もあるだろうし、な?」
「ああ、そうだな……」
まるで、導くように前を歩く二人にようやく硬い笑みを浮かべて、私はそう返して後に続いた。




