第三話
『あけましておめでとう!!』
1月1日、新年の始まりと共に私の前後で祝う声が響き、並んでいた列が動いた。
冬の外気で冷たくなった携帯を懐にしまい、私も前の人達に続く。
小さい神社故に、順番はあっという間にやってきて、私は予めポケットにしまっていた小銭を取り出し、賽銭箱へと投げ入れる。
二拝二拍手一拝。幾つかを願い、私は拝殿を離れた。
「ここは……変わらないな」
境内で話す人達を眺めながら、私は零す。
神社という場所柄、数える程度しか来たことはないが、それでも、記憶と何一つ変わらない光景に安堵した。しかし……………
(安堵?何故、何に……………?)
無意識に感じた想いを私は不思議に感じ、その答えを求めるように拝殿へ視線を移すも、当たり前というべきか、答えは返ってこなかった。
◆◆◆
あれから数分後、私は神社を後にし、細い路地を通り帰途についた。
この時間、当然バスなど出ているわけがない。帰りは自然と徒歩になる。だが、気にするような事でもなかった。
歩き慣れた道だ。幼い頃に何度も歩いた道だ。
だが、周りの建物を見て、また妙な寂しさを覚える。
あの頃に見た建物は取り壊され、空き地が目立つ。
小さな書店も和菓子屋も、自転車屋も、あった場所には何もない。
仕方のないことだ。建物の老朽化などもあるが大通りが再開発の影響で賑わい、この辺りは余計に閑静な場所へと変わってしまっている。
いつまでもあの頃のままなどあり得ない。
寂しさが、また胸を埋める。その時だった。
「…………?」
遠くから聞こえる喧騒。気付けば、路地は目の前で三つに分かれていた。
正面、やがては団地に行き着く行き止まり。
右、小さなバス通りへ続く道。
そして左、商店街通りへ続く道。
私が目を向けたのは左、商店街へと続く道だ。
聞こえてくる音は、思ったよりも大きく、視界の奥に見える淡く光る暖色の漏れ出る場所に私は眉を顰める。
あり得ないから、だった。
(どうする………?)
と考える。見なかったことにして、右へ向かい、バス通りを道なりに進み、帰るべきだ。
そう結論づけた。
しかし、私の身体はその結論を無視し、左へと向かった。
そうして私は、信じられない光景を目にした。




