第二話
あの日、あの人はオレにとある話をしてくれた。
普通ならば、「そんな事などあるはずなどない」と鼻で笑われそうな一つの話。
年の始まり、在りし日の記憶を見せてくれた小さな商店街の話を――――。
◆第一章・「睦月の幻〜Reunion and a Beginning〜」◆
12月31日、時刻は23時を少し過ぎた頃、私は大通りから脇に伸びている、小さなバス通りを黙々と歩いていた。
住宅街で、それも年末だからだろうか。車道を走る車の走行音以外の音は殆どといっていいほど無い。
向かうのはこの道の出口脇にある小さな神社。
目的は勿論、初詣である。
「何年ぶりか、此処に初詣に来るのは……」
独り言を漏らす。目的の神社は駅からバスで移動し、それから徒歩で10分ほど……、計1時間程度の場所だ。
何故、近所の……それも歩いて数分程度の神社に行かなかったのかは単純な話、今日は別の場所で初詣をしようと気まぐれを起こしたからだった。
もう一つ、生まれ育った場所がこの辺だったから、というのもある。
こうして夜道を歩くのも悪くない。
あの頃は子どもで、こんな時間に出歩くことなどなかったのだから、見える景色は懐かしく感じるのと同時にどれも新鮮であった。
しかし、当時住んでいた頃に比べ、所狭しと並んでいた店の殆どがシャッターを下ろしていることと……。
色褪せ、塗装の剥げた看板を見て、自然と寂寥が心を埋め尽くす。
そう、物思いに耽っていると、前方に神社が見えてきた。
日付が変わるまで後少し。私は境内の淡い光に目をやる。
新しい年になれば、また何かが置き去りにされるのだろうか?
そんな僅かな不安に抱かえながらも、鳥居の方から聞こえる人の声に惹かれるように、私はそちらへと向かう。




