第一話
12月もあと数日……、睦月が目前まで迫る頃。
暖房の効いた部屋で男はテレビを眺めていた。
年末の番組の宣伝や、町の様子を伝えるリポーター、いつも流れているCMをただただ、目で追っている。
そう、追っているだけ。内容などこれっぽっちも覚えていないし、覚える必要もない。
別に、今に始まった話でもなかった。ここ数年の年末はいつもこう。
ただ、無為に時間を浪費し日々を超え、重ね続ける。
それは年末年始だろうと変わらないし、これからもそうだろう。
ただ、あの日々を忘れる為に、日々で埋め尽くす。そうすれば、抱える苦悩をいつか、消し去ることができる。
そう、思っていた。
「――――――ん?」
テレビに映る風景に、その男は珍しく意識が取られる。
この時期には珍しくない、去年の初詣の様子を撮ったであろう番組。
顔をテレビの光に照らされながら、画面に映るある場所を見つめていた。
数カ月ぶりにテレビの内容をちゃんと追えば、間違いない。
そこは勝手知ってる自分の生まれ育った故郷にある神社だ。
夜にオレンジ色の光で照らされる小さな神社の境内と、賽銭を投げ込んだり、おみくじを引いたり、白い息を吐きながら甘酒をちびちびと飲む人々。
僅かにカメラが神社の敷地の外を映し、見えた閑静な住宅街に目がいく。
忘れようとして忘れられないある人と、その人が話してくれたある話が脳裏を過ぎる。
現在進行系で寂れる傍ら、違う形に上書きされていく町。その町にある、商店街の話を―――。
彼は暫し思い悩んだ後、携帯に登録されているアドレスから、一つの番号を見つけだす。
番号は変わっていないだろうか?
連絡を一方的に絶ち、自分の目的の為に今更連絡する事は図々しいことではないだろうか?そして、その資格はあるのか?
思いが巡り、通話ボタンを押とうする指が一瞬止まるが、それでも結局は通話ボタンを押し、携帯を耳に当てた。
呼び出し音は二回程度、その相手はすぐに出た。
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