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睦月の幻  作者: 時計屋
第四章「The Woman in the Painting」
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第二十話


「すいません。結局ここまでしか案内出来なくて」

「そんなことないわ。ここまで来れれば帰れるもの。私の方こそ、付き合わせてごめんね」


目的の駅で降りたオレ達はタクシーが来るのを待ちながら、そんなやり取りを交わす。

残念ながら、女性の家がある最寄りの駅までの電車は終わってしまっていたのだ。

けど、女性は気にせず笑っていた。


話していると一台のタクシーが、タクシー乗り場へと入るのが見えた。


「ここでお別れね。あ、そうだ!これ、持ってきなさい」

「……え?って、そんな!悪いですよこんなの!?」


手に握らされたもの………それが一万円札だと知って慌てて返そうとするも、女性はオレの手を包むように押さえ込んで、それを拒んだ。


「いいから!ここまでしてもらって手ぶらで返すなんてこと、送ってもらった側にさせるつもり?」

「いや、それは………」


女性の勢いに思わずたじろぐと、女性は満足そうにしっかりとお金をオレの手に握らせた。


「これでもお金はいっぱい持ってるから、ね。何処かで宿を取って、それからゆっくり帰りなさい?」

「……ありがとうございます。使わせていただきます」


女性の言うことも尤もなので、素直にお礼を言うと、彼女はうんうんと頷き、微笑む。


「改めて、今日は本当にありがとう。彼には会えなかったけど……代わりに楽しい時間だったわ」

「はい!オレも楽しかった。会えるといいですね……いつか」

「そうね。また、会えるかしら」


そう言って寂しげな微笑みを浮かべると、女性は「じゃあ、また何処かでね!」と手を振り、少しだけ名残惜しそうにタクシー乗り場へと向かっていった。


「また何処かで!お金、ありがとうございました!!」


オレも手を振って、最後にまたお礼を言うと、女性は一度だけ振り返って手を振りかえし、タクシーへと乗り込んでいった。


テールランプの残光を残し、遠くへと消えていくタクシーを見送り、それから家があるであろう方角を見やった。


「さあ、どう帰ろうかな……」


自分以外の人の声のない静かな夜。

車の走る音に耳を澄ませながら、オレもまた、夜の静寂へと足を向けた。



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