第十九話
(……まあ、そんな感じで助けたわけなんだけど)
電車の揺れに身を任せ、少し前のことを思い返しつつ内心で苦笑した。
それから、オレはあることが気になって、隣にいる女性に目をやった。
「どうしたの?」
「いえ、海外にいらしたのかな、とか?」
目の前の女性はどう見ても日本人だ。
けれど、話す日本語は片言が少し混じっているのが少しだけ気になった。
すると女性は「だよね……」と苦笑を浮かべた。
「ええ、そうなの。つい最近、こっちに帰ってきたの。忘れないように向こうでも日本語は使っていたんだけど……やっぱり影響出ちゃうか。変だった?」
「いえ、全然。いつから向こうに?」
気さくに答えてくれる女性に聞いてみると、女性は唇に人差し指を当て、どのくらいかと思い起こしていた。
「私が学生の頃だから、もう二十年以上前ね」
「二十年…………」
どうしてか、奇妙な既視感を覚えた。
「どうして、あんな場所に。ただ迷い込んだだけですか?」
「……知人に会いに来たの。学生の頃の、ね。まあ、盛大に迷子になって、辿り着けなかったけれど」
「場所は?」
女性はその場所を教えてくれる。
そこはオレと先生が住んでる町だった。
『次は〜』
電車内に次の駅のアナウンスが響き渡る。
気付けばあと少しで、女性が降りなければならない駅だ。
「どんな……人なんですか?」
既視感がより、濃くなる。
女性はオレの躊躇いの混じる質問に、どう答えるか……。
考えるように目を伏せ――
「――――真っ白な人。静かでぶっきらぼうに見えて……けど、とても素敵な人」
その記憶を懐かしむような、慈しむような声で、女性は言う。
その姿に、あの絵に描かれた女性の姿が、うっすらと、重なって見えた気がした。




