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睦月の幻  作者: 時計屋
第四章「The Woman in the Painting」
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第十九話


(……まあ、そんな感じで助けたわけなんだけど)


電車の揺れに身を任せ、少し前のことを思い返しつつ内心で苦笑した。

それから、オレはあることが気になって、隣にいる女性に目をやった。


「どうしたの?」

「いえ、海外にいらしたのかな、とか?」


目の前の女性はどう見ても日本人だ。

けれど、話す日本語は片言が少し混じっているのが少しだけ気になった。

すると女性は「だよね……」と苦笑を浮かべた。


「ええ、そうなの。つい最近、こっちに帰ってきたの。忘れないように向こうでも日本語は使っていたんだけど……やっぱり影響出ちゃうか。変だった?」

「いえ、全然。いつから向こうに?」


気さくに答えてくれる女性に聞いてみると、女性は唇に人差し指を当て、どのくらいかと思い起こしていた。


「私が学生の頃だから、もう二十年以上前ね」

「二十年…………」


どうしてか、奇妙な既視感を覚えた。


「どうして、あんな場所に。ただ迷い込んだだけですか?」

「……知人に会いに来たの。学生の頃の、ね。まあ、盛大に迷子になって、辿り着けなかったけれど」

「場所は?」


女性はその場所を教えてくれる。

そこはオレと先生が住んでる町だった。


『次は〜』


電車内に次の駅のアナウンスが響き渡る。

気付けばあと少しで、女性が降りなければならない駅だ。


「どんな……人なんですか?」


既視感がより、濃くなる。

女性はオレの躊躇いの混じる質問に、どう答えるか……。

考えるように目を伏せ――


「――――真っ白な人。静かでぶっきらぼうに見えて……けど、とても素敵な人」


その記憶を懐かしむような、慈しむような声で、女性は言う。

その姿に、あの絵に描かれた女性の姿が、うっすらと、重なって見えた気がした。



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