第十八話
◆第四章「The Woman in the Painting」◆
ことの発端は日付が変わる直前だった。
オレはバイト終わりのへとへとの身体で駅のホームに向かうエスカレーターに寄りかかった。
「……あー、間に合った。畜生、店長め」
毎度毎度、人が翌日休みの日に厄介な仕事を押し付けてくるのは何とかならんのだろうか。
お陰で降りる駅を通る電車、最後の一本にギリギリ間に合うように全力疾走する羽目になった。
自分はチャリで帰っているからって、余裕ぶりやがって。
などと本人がいないのをいいことにひたすら文句を言いながらエスカレーターを降りた時だ。
「……………ん?」
ホームには疎らに人がいた。
その中で一人だけ、ひどく困った顔で電車の路線図と携帯の画面とを見比べている女性が……。
四十代後半………先生と同じくらいか。
時折、周りにいる誰かに助けを求めるように視線を投げているが、誰一人、気付いてはいなかった。
「…………あー」
この時間、そしてこのシチュエーション。
オレはイヤでも女性の悩みを察してしまう。
暫し黙考し、肩を落とす。
さらば、風呂と惰眠。
そして、こんばんは。片道切符の旅。
深呼吸。覚悟を決め、オレは女性に近付く。
「あの、何かお困りですか?」
「え?あ………その、帰り方が分からなくて」
「行きたいのは?」
おずおずと、携帯の画面を見せてくれる。
Oh、なんてこった。まったく真逆の方面じゃねえか。
「そしたら、オレが案内しますよ。これから帰るとこだし」
「でも、そんなことしたら貴方が……」
「平気平気。それに――」
警笛が響き、電車がガタンゴトンと音を立てて近付くのを見てから、女性へとウィンクをやる。
「もう、電車来ちゃいましたね」
こうして、オレは初めて会ったばかりの女性に無理やりくっついて、夜の帰り道を案内することにしたのだ。




