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ロゼとユッカ~二人がおうちに帰るまで~  作者: 猫宮蒼
三章 それはさながらゲームのような

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旅は道連れ



 ユッカの祖父が秋に山でキノコ採りに行った時の話である。

 去年までは沢山採れていたけれど、どうにも伐採などが始まったらしく風通しが良くなってしまったせいで、今年は一本もキノコが生えてなかったんだ。

 そんな風に言われた時の事を、ユッカは漠然と思い出していた。


 フォリスの状況もある意味でこれに近いのかもしれない。


 結局祖父はその山を諦めて他の山に移動したと言っていたけれど、フォリスの場合はどうだろうか。


 祖父は他の山という選択をしたが、フォリスの場合はこの地区以外の他の場所を選ぶという事になるのかもしれない。勿論、この地区で他の場所にお目当ての物があるという可能性もまだ普通にあるのだけれど。


(でも荒野って言ってたしな……そういう所だとありそうな気がまるでしないな)

 荒野の更にその向こう側に行けばもしかしたら、案外そちらでも同じように草原が広がっていたりするのかもしれないけれど……だがそうなると、真ん中の部分だけが荒野になっているという事になる。

(あるかなぁ……端っこからじわじわ、ってんならわかるけど真ん中から外側に向かって、っていうのはちょっと微妙な気がする)


 想像しておきながら、やっぱないなという結論に辿り着く。


 フォリスはディオスよりは少しだけ背が高くはあるけれど。

 しかし筋肉がもりもりついているかと言われればそうは見えないし、どちらかといえば細身である。

 なのでバリバリ戦闘こなせます、とか言えそうにない見た目ではあるので、なんか知らんうちに荒野になってるから怖くて先に進めない、と言い出してもまぁ、わからないでもない。


(私だって知ってるはずの道が全然違う感じになってたら……いやまぁ、工事してるとかなら迂回するけど、そうじゃなかったら案外普通に通るか? んー、あ、治安悪くなってそうなら避けるかな。

 フォリスのもそれに近いやつかも)


「魔力の痕跡辿った感じ、その先に誰かしらいるっぽいはずなんだけど」

「果たしてそこにいるのが本当に人かまではわからないじゃないですか」

「そう言われるとそれはそう」


 知り合いの魔力であればロゼやディオスは察知できそうだが、そうじゃないものに関しては魔力を持っている生命体である、という事しかわからなさそう。

 つまりフォリスも魔力反応を察知はしているけれど、そこに知り合いがいるでもないので未知の生命がいる、という認識なのだろう。


(まぁ普通は気配で察知とかも難易度高いもんね。私だって知ってる人の気配とか知らんし)


 生憎とそこまで達人ではないのでむしろ察知できるだけでも充分だろうという気がする。


 ただ、特に何も変わりがなければその察知した反応もどこかの町や村の人たち、という風に思えただろうけれど、しかし広がる荒野という以前にはなかったものがあるために。

 本当にその先にある魔力の反応が人であるかを疑った。

 もし魔物の群れだとかであれば、一人でのこのこ赴けば危険であるのは言うまでもない。


 そんな風に考えてしまえば、確かに一人で行くのは気後れするだろう。


 ユッカとしてはそう考えれば理解できるし納得もする。


 けれどもロゼはそうではないようで、何言ってるんだろ、とばかりに小首を傾げていた。

 ディオスは無反応である。


「グラヴィールの実は食べたい。でもわけのわからない場所を探索するという危険は冒したくない。

 だから安全そうな平原エリアを移動してたんですがグラヴィールの木が見つからない……!」

「諦めて他の地区で探すとかは?」

「生憎とグラヴィールの実を他の地区で見た事ないのであるかどうかもわからない地区を探し回るのも正直ちょっと」

「気持ちはわかる」


 ほしい物があって、でもそれが近くのお店で売り切れていて。通販は入荷待ち、となれば他の店に在庫がないか確認しに行った方がまだ可能性はありそう。転売ヤーから買うなんてのは値段が馬鹿みたいになっているから論外である。仮に通販で買うにしても、商品の定価の値段と送料分以上を払うつもりはユッカにはないので。


 そんな状況に近いだろうか。


 ただ、そうやって自らの足で探すにしても、世界の果てまで行けるわけもない。

 ユッカがその立場だったとして、行けるのは精々交通機関を使って日帰りできる範囲に限るし、欲しい商品よりも交通費がそれを上回るとなるとそこも尻込みする原因になるだろう。


 転移装置があるこの世界ではあちこち移動できるから、ある場所さえわかっていればそこを目指せば済む話ではあるけれど。

 しかしフォリスはこの地区以外でグラヴィールの実がある場所を知らないと言う。

 であれば確かに他の地区をむやみやたらと探しに行くのは労力を考えるととんでもなく面倒であるのは言うまでもない。


 それならまだ、同じ地区の中で探し回った方がまだ可能性はありそうだ。

 けれども以前と風景がガラリと変わったせいで、何があるかもわからない状況となれば……


(すぱっと諦めた方がいいのかもしれないけど、でもそれが簡単にできれば苦労はしないっていうか……)


「えーっと、とりあえずこの先の町か村かは知らないけど行くつもりではいるから、だったら一緒に来る?」

「にゃっ!?」


 ユッカ!? とばかりにロゼが声を上げる。

 まぁそうだよね、一応自分の事を知ってる相手を連れていくのはロゼとしては気まずい思いがあるよね、とユッカだってわかってはいるけれど、でもだからといってここで「そうなんだぁ、大変だね。じゃ私たちはこれで」と立ち去るのもなんだかな、と思ってしまうわけで。


 フォリスの証言から、どう足掻いてもこの先に広がるという荒野を行くのは確定である。

 来た道を引き返して他の地区へ行く、という選択をすれば話は別だが。


 しかし折角来た以上、ただ草原を歩いただけで引き返すというのも……というのがユッカの正直な気持ちだった。まだ何の事件も起きていないし、そもそも事件が起きるというのが確定しているわけでもないのだ。


 荒野が広がるところまで行って、その上で「あ、これはヤバイかも」と思えるようなら引き返すというのも有りかもしれないが、フォリスの言葉だけではただ荒野が広がっているというだけで、そこまでの危険性を感じられない。

 以前はそうじゃなかった、という事で確かに何かあるんだろうなとは思うけれどそれだけだ。


 これが魔物がとんでもないくらい沢山跋扈している、とか言われていたらユッカだって先に進もうなんて言わずにいや帰ろう他の地区へ行こうとなったかもしれないが……


「いいんでスか? 一人は流石に心細いので助かりまス」


 フォリスもグラヴィールの実を諦めるというところまではいかなかったようで、ユッカの提案にあっさりと乗ってきた。ぱしん、とロゼの尻尾がユッカを打ち付けたが特にダメージがあるでもない。

 ユッカはロゼを持ち上げるとそのまま先程の念話の時同様におでこをくっつけた。


(気まずい気持ちはわかるけど、下手に遠ざけようとするよりは普通に接した方がいいと思うんだよね)

『そうなんだけど、でもぉ……』

(それに話の流れ次第ではロゼのお弟子さんのイシェルについても聞けるかもしれない)

『そう言われると……』

(ま、話の流れ次第だから聞けないままってのもあるかもだけど)


 生憎ユッカはコミュ力が高いわけでもないので、話の運び方が不自然にならないように気を付けて望みの情報を聞き出せとなると相当な難易度になる。

 なので本当に相手との話の流れ次第だ。


「それじゃ、これからよろしくねフォリス。

 私はユッカ。こっちがロゼ。それから」

「ディオスです」


「よ、よろしくお願いしまス」


 こうして、ユッカたちはフォリスと共に荒野へ向かう事となったのである。

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