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ロゼとユッカ~二人がおうちに帰るまで~  作者: 猫宮蒼
二章 ノーヒントにも程がある

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物理招集



 村長さん曰く、かつて村長さんのおじいさんから畑には守り神様の加護がある、と聞かされていたらしく。

 おじいさんの話から守り神様は白くて丸い姿をしている、とまで聞いていたものの、そもそもそれは村長さんがまだ小さい頃の話だったようなので、こどもに向けてのお伽噺か何かだと思っていたらしい。


「神って言うならそれなりの扱いをするペポ」

「ふてぶてしいな」


 村長さんの家に案内されて、村長さんからそんな風に話を聞かされていたが、ククルビタは一人掛けのソファに座ってふんぞり返っているので、ユッカもつい反射で思った事を口に出していた。


「いやでも、前に人前に姿を見せたらなんか捕まりそうになったんだっけ?」

「そうペポ。作物を収穫して運ぶ時の魔法か何かで野菜に手足が生えて好き勝手動き始めた時ペポ。

 あぁ、でも別のオイラはそれ以外でもガキンチョどもに追っかけられたらしいペポな」

「まぁ、見慣れない生命体がいて、魔物と違って危険性もなさそうな見た目してたら好奇心で追っかけまわすかもね」


 結果として身の危険を感じたククルビタが人前に出ないようにしていた、というのはわからなくもない。

 むしろユッカがその立場なら、確かに人を避けるだろう。ある程度身を守る事ができる算段があるならまだしも、そうじゃないなら下手に姿を見せればどうなるかもわからないのだ。

 さっきはお供えの件をさっさと話しておけばよかったのに、なんて思ったが、話をしようにも危険かもしれないと思うと確かに気軽に行動には移れないよなぁ、と思い直す。


 だがしかしこの精霊、自分の身が安全であるとわかった途端態度が尊大すぎやしないだろうか?


 なんて思ったのはどうしようもないくらい本当の事だし、それについて突っ込みを入れていたらいつまで経っても話が進まないなとはユッカだって理解できてしまったので。


 とりあえず内心色々思う事はありながらも、事情を説明する事にした。


 事の発端から、今に至るまで。


 たかがお供えされどお供え。

 それがなくなった事で本来この地に住まうべきではなかった彼らはこの地区から拒絶されつつある事。

 この地区がそのせいで不安定になりつつある事。


 そもそもこの地区をククルビタが作ったというのなら、それこそ邪魔な連中は追い払えばいいだろうに、一度受け入れた事でそれも難しいらしい。


 それ以前にククルビタたちはこの地区の住人同様、攻撃には向かないのだとか。


 確かに攻撃という手段を簡単にとれる存在であるのなら、わざわざ住人を受け入れた挙句結んだ契約を一方的に反故にされて結果全体的に困り果てている今の状況を作るよりもっと最初に、住人を受け入れないという選択肢だってとれただろう。


 だがしかし、この地区で作物が育たなくなった後、いよいよここはもう駄目だ、となって住人たちがいなくなりさえすれば、ククルビタたちは余計な力を使わなくて済むので、そうなれば土地もゆっくりと回復させる事もできるのだとか。


 その際に転移装置も閉じて封鎖状態にしてしまえば、今後同じような状況で悩む事もなくなる、なんて言っていたが、その選択肢を選ぶかとなるとそれはまた別の話だ。


 この地区に住んでいる住人たちは戦闘には向かないため、今から他の地区で暮らすにしても余程安全な地区にいかなければ即座に死ぬ可能性が高まる。


 作物が育たない原因もてっきりダミアンが何かしていたのかもしれない……と思っていたが、そこまではしていなかったと判明しても、現状すぐにその事態が解決するわけでもない。


「お供えねぇ……湖の近くにお社があったって?

 あの湖の近くによく行ってたのって確か……」


 思い当たる節でもあったのか、村長さんは腕組みしながら考え込んだ。


「あっちの村にそういやいたかも。

 よく湖に出向いては何かしてたお爺さん。

 でもあの人が死んで結構経つからね。家族もいなかったみたいだし」


「あっ、その言葉でなんかピンときた。

 もしかしてお供え届けるのって大勢に知られてなかったとかじゃない?

 そのせいでお供えがいるっていう事を年月が進むたびに知ってる人も少なくなって、そのお爺さんとやらが他に言ってないならその人が死んだ時点で誰も知らないからお供えを供えるっていうのがそもそも無理。

 引き継がれた上で軽んじたならともかく、知らない以上やりようがないもの」


 せめて死ぬ前に手紙なり何かに情報を残しておけよ、と思うものの、そのお爺さんが自分はまだまだ長生きするつもりでそういった情報を残す事を後回しにした可能性は普通にある。


 ユッカが住んでいる世界でも、似たような事は沢山あるのだから。

 具体的な話はすぐに出てこないが、とりあえずパッと思いつくのは暗証番号とかパスワードとかの類だろうか。

 本人が死んだ時点で通販の定期購入とか解約するのに苦労したとかいう話は割とよく聞く。

 電話で解約できればいいが、場合によってはネット環境がないとどうにもならないやつだとか。

 パスワードがパソコンに保存されてるならどうにかなりそうだが、それがされていない場合、パスワードが書かれたメモでもなければ色々と面倒な事にしかならないだとか。


 パスワードの再設定とかでどうにかいけるかもしれないが、残された側がそこまで詳しい相手じゃなければマジで詰むというどうしようもない状況。

 通販などの現物が届いたとかならわかりやすいが、動画の有料会員だとかサブスク系統は加入している事さえ知らなければ知らないうちに支払額が……なんてトラブルがあるだとか。


 ユッカの身近ではまだそういうトラブルはなさそうだが、しかしそれでもちょこちょこ耳にするのだ。


 もっともユッカが思い浮かべたケースの場合は支払いが滞ってますよ、とそのうち請求書あたりが届けられたりするからいずれ発覚するけれど、今回のククルビタ地区の場合は下手をすれば発覚する事のないままこの地区が終了する可能性もあったのだ。


 ククルビタがこうして人前に姿を見せたから発覚したが、ダミアンがこの地区に密かに居座り続けていた場合はククルビタも閉じ込められていた状態だったので、最悪のケースになり得る可能性はもっと高かった。



 ともあれ、作物が育たなくなってきているのは、この地区の住人たちがこの地区の異物とみなされていて、そのせいだというのは一応理解されたようだ。


「うぅん、とりあえず……他の皆にもこの話をしないといけないわけなんだけど……

 流石にこの地区の各町村の代表者を連れてきてくれ、と頼むのは大変だよね」

「転移装置使えるなら問題はないんじゃないかな、とは思いますけれども」


 全部徒歩でやれと言われたらどんだけ時間がかかるとお思いで!? と叫んでしまいそうだが、しかし今なら転移装置を使ってこの地区内を移動するくらいなら可能だろう。

 それでも毎回他の町や村で町長だの村長だのに事情を説明して回るとなるととても大変そうではあるが。


「うん、それを丸投げするつもりはないけど、念のため護衛とかでついてきてくれるかい?

 簡単な事情説明に関しても、外から来た人より知り合いが言った方が信用されるだろうし」


「それは確かに」


 外から来たであろうダミアンを信じた結果が今、であれば、ダミアンを追い払ったユッカたちではあるけれど、それを見ていたこの地区の人はいないわけで。

 であればすんなりと信用されるかとなると、それも難しいだろう。

 むしろ一度騙された分、警戒心が増していてもおかしくはない。


「じゃあ私とロゼが一緒に村長さんと移動するって事で。

 ディオスは一応ククルビタの事見ててくれる?」

「えぇ、わかりました」


「あー、ここに集まるより研究所がある町の方で待っててもらえるかい?

 以前はそっちで集まって話し合いをしたりしてたんだ」

「そういう事なら」


 村長さんの言葉に頷くと、ディオスはむんずとククルビタを掴んだ。

「ペポ!?」

「それでは一足先に行ってますね」

「ペポー!? 離せペポ! 普通に歩けるペポー!?」

「すいません貴方の歩幅に合わせるとうっかり蹴飛ばしてしまいそうなので」


 ははは、と穏やかに笑うディオスだが、その手はとてもしっかりとククルビタを捕らえていた。

 頭から鷲掴みにしているので、暴れてもククルビタの短い手は悲しい事にディオスの手には届かなかった。


(昔のUFOキャッチャーでぬいぐるみ掴んだ時みたいな持ち方されてんな。

 今のアームは独特だけどあれは完全に一昔前のタイプ)


 そもそもディオスはゲーセンの機械ではないのだが。

 どうせ声に出してないわけだし、とユッカは雑に自分の中で完結させた。



 そうして村長さんを連れて、まずはこの村の近くにあるという転移装置の元まで移動する。

 思っていたよりも近い位置にあったので、むしろなんで気付かなかったんだろうと思うばかりだ。


 ともあれ転送装置でククルビタ地区の町や村に移動して、村長さんに事情説明を任せた上でそこの代表者を伴って。

 そうして地下に研究所が広がる町へとユッカたちは戻ってきたのであった。

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