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ロゼとユッカ~二人がおうちに帰るまで~  作者: 猫宮蒼
二章 ノーヒントにも程がある

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解決の兆し



 とりあえずククルビタを連れてユッカたちは適当な町か村を目指す事にした。

 とはいっても、地図を貰ったとはいえこの地区に詳しいわけでもない。湖の更に先の行った事のない場所を目指すよりは来た道を引き返して、一度立ち寄った町か村に戻る方が確実である。


「ところでさ、お供えをしていたっていうのはわかるんだけど」

「ペポ?」

「どこにお供えするの?」


 お供え。捧げもの。

 言い方はいくつかあるけれど、ともあれそれも一種の儀式と言えばそう。


 供えるのがククルビタという野菜――果物? ともあれ、この精霊と同じ名を冠した物であるのは確かだが。


 ソシャゲのガチャを回す時に狙ってるキャラの好きな物――食べ物とか、小物とか――や、キャラモチーフのアイテムなどをスマホの近くに置いて「頼む来てくれ!」とやるのとはワケが違うと思うわけで。

 そもそもそういうのは終わった後で元の場所に戻すなり食べ物なら自分で食べるなりする。


 しかしククルビタに捧げものをするというのなら、それはこの精霊に渡さねばならない――はずだ。


 適当に食卓にククルビタを使った料理を置いて、お祈りをするだけ――なんて簡単な話ではないのだろう。

 もしそれでクリアできるのなら、どこかしらの家庭の食卓にククルビタが出ていたはずだ。

 そこそこの年月一度もククルビタが食卓に出ない、というのも流石にないと思いたい。


 いや……どうなんだろう。

 出ていないかもしれない。

 そこら辺ユッカにはわからない。


 ぽわんぽわんと弾むように歩いているククルビタを見ても、この見た目の野菜が本当にそうなのかがわからないので。


 この見た目そのままであるなら、恐らくは野菜だ。

 カブやまるっこい大根のように見えなくもないが、だがしかしそのものズバリかと言われると微妙に違う気がする。


 それに本当に野菜かどうかもわからない。

 見た目が果物っぽくても実は野菜だとか、その逆に野菜だと思ったら果物だった、なんていうのもユッカの世界には存在しているので。


 スイカだってユッカは果物だと思っているが、実のところ果実的野菜とかいう野菜の仲間らしい。農林水産省の分類ではそうなんだとか。

 でもユッカの中では果物である。スーパーで売られている時だって野菜コーナーよりも果物コーナーのところにいるわけだし。


 ちなみにスイカだけではなくメロンも同カテゴリとかどうとか。

 メロンの漬物とかあるからギリ野菜って言われてもまぁ……うん、と頷く気持ちはあるけれど、しかし赤肉のジューシーなお高いメロンを野菜と言われると否定したくなる気持ちよ。


 更に同カテゴリに苺も存在していると聞くが、苺は絶対果物じゃろがい、とユッカは思っている。


 何が言いたいかというとだ。

 どこからどう見ても果物だと思うけど実は野菜に分類されているものがある以上、このククルビタが見た目野菜っぽくても実は果物説がある可能性もあり得るという事だ。


 この地区で育てられていた作物はどちらかと言えば野菜多めであるようだった。

 なのでもしククルビタが果物であった場合、何を置いても最優先で育てる……とはいかないのではないか。

 果物だって無いわけじゃなかったけれど、育てやすさや収穫のしやすさによってククルビタがいつしか育てられなくなった……なんて事もあるかもしれない。


 それに関しては後で他のこの地区の人たちを交えて話し合う時にでも聞けばいいかな、と思ってはいるが、それはさておいてお供え物をどうするのかについて聞いておかなければどうしようもない。


 ぽよんぽよんと弾むように歩いていたククルビタは、そんなユッカの質問に、

「どこってそりゃあお社に……ペポ」

 何を当たり前の事を聞くんだろう? みたいな口調だったくせにククルビタは答えている途中で足を止めた。


「ペポ」


「どしたん」


「おや……おや、お社がないペポー!?」

「ないペポー、ってそもそもどこにあったのさ」

「さっきの湖の近くペポ! そこにあったはずなんだペポ!」

「えっ、じゃあ壊されたとかそういうやつ? ってか、あの小屋ぶち破って登場したけどあんたホントにどこにいたのさ」


「ペ、ペポォゥ……」

「ぺぽう、って言われてもこっちだってわかんないんだけど。ちゃんと説明してよ」


 ――移動中に聞きだした話としては、お社は元々湖の近くに存在していた。これは間違いがない。

 けれども大雨が降って湖が荒れて。その時にどうやらお社は壊れてしまったらしい。

 それでも、次のお供えの時にでも誰かがくればお社も直してもらえるだろう。そう思ってその時は特に緊急性も感じてはいなかった……らしい。


 らしい、というのは当時こうして実態を持っていたククルビタはこのククルビタではなかったようなので。

 なんでも実体化してそこかしこにいられると、うっかり他の作物と同じ扱いをされるかもしれないからといつしか順番で実体化してそっとこの地区を見守っていたらしい。


 けれどもその年、お供えは届けられなかった。


 その直後に次のククルビタに順番が回り、そうしてその時のククルビタは眠りについた。

 実体化したククルビタが交代にやってきて、そうして最初に実体化していたククルビタは実体化を解除できる。


 一斉に解除してしまうと、次に形を作る時に上手くいかないのだそう。


(って事はもしかしてこのククルビタ、見た目野菜だけど本当の意味でのククルビタじゃない、って可能性もある……って事?)

 そんな疑問がよぎったが、ともあれ話に耳を傾ける。


 お供えが届けられる事がないまま次の年がやってきた。

 けれどもやはり、その年もお供えは来なかった。


 実体化したククルビタが、どこか手近な町か村に突撃をかけたようだがその時どうやら村人の魔法で作物に足が生えて勝手に畑から逃げ出すというハプニングが発生していたらしく、ククルビタもそれと間違われたらしい。

 命からがら逃げだしたククルビタは、その後人前に出る事をやめた。

 そして他のククルビタたちにもその情報を共有した。


 人前に出ないままで、お社が壊れた事を伝えるに伝えられず、更にお供えは来ない。


 そうこうしているうちにお社は完全に朽ち果てて――それでもお供えは来なかった。


「いやあのさぁ、人前に姿を見せないようにせめて声だけで伝えるとか、なんか他の方法なかったの?」

「落ち着いて考えたら思い浮かんだかもしれないペポね。

 でも他のオイラたちは思いつかなかったし、オイラも交代で実体化したばかりだったペポ。

 他のオイラたちの分も纏めて言ってやるペポー! の気持ちで出てきた結果が今ペポ」


「それで、お供えが届かなくなってからどれくらい経過したの」

「結構経ってるはずペポよ。他のオイラたちはこの地区を維持するために力を使ってはいるものの、お供えがなくなったから余計に力を使う形になってしまったペポ。

 そっちにかかりきりで余計に他の事なんて無理だったペポ」


「ふぅん?」


 色々と突っ込みどころがあるような気はするけれど、しかしユッカの考え方とククルビタの考え方が違うのは言うまでもない。

 そうでなくともククルビタは精霊だと言っているのだ。人間であるユッカと同じ考えかたができると思うのは大きな間違いだろう。

 それにさっさとお供え物――と言う名のみかじめ料みたいなものを徴収しにいけよ、とユッカは思うわけだけれども、このククルビタ地区はククルビタたちが作り上げた自分たちのための楽園みたいなもの。それの維持が最優先であるのは言うまでも無い事だし、じゃあここの住人の事が後回しになるのも仕方のない事……なのかもしれない。


(お供えがないせいで余計に力を使う事になる、って時点でだったらさっさと住人に話通せよって思うのはそうなんだけど。

 でも、仮にそれを伝えたとして、住人が素直にお供えをするか、っていうのも微妙なところだよね)


 立ち寄った村や町で、精霊がどうこうといった話は耳にしなかった。


 であれば、もしかしたら概念的にいると知っていても自分たちとは無関係のものだと思っている可能性もある。

 そんな精霊がある日突然現れて、お供え物をしろ、なんて言ったところで何言ってんだって思うかもしれない。


(まぁ、私もばあちゃん家の庭で育ててるトマトの苗の精霊がお供え物よこせ、とか言って出てきたとしても普通に信じないし。精霊っていうか妖怪扱いだよなぁ……むしろ新手のもののけかと思うわ)


 神様とまではいかなくても、せめて夢枕に立つとか、なんかこう……そういう感じの演出は欲しい。

 そしたら少しは信じるかも……いやどうだろう、他の人にも見えてるならまだしも、自分しかいない場所でそんな事になったら疲れてるのかな……? なんて思って見なかった事にするかもしれない。


 ともあれ、道中ではもう御使いと遭遇する事もないままに、とてもスムーズに村に戻る事ができた。


 そのついでに確認したが、畑の上に居座っていた臓器みたいな物体は消えていたので、ディオスがダミアンの術式を解除できたというのは確かな話だったようだ。


 だが――


「なんていうか、畑、こんなだったっけ?」


 確かに臓器みたいなのがドックンドックン脈打ってた時はうわ気持ち悪ッ! なんて思っていたりもしたけれど、けれどもう少し畑には元気があったように見えなくもなかった。

 畑に元気も不機嫌もないだろうと思われそうだが、実際そういう感じなのだから仕方がない。


 臓器らしきブツがあった時は、まだ力に満ち溢れていたというか、無理矢理元気をひねり出されていたというか……人に例えるのならエナジードリンクガブ飲みしましたみたいな、そういったやや不健全な元気さのようなものがあった。

 だがしかし、今はそれがなくなって本来のマトモな畑のはずなのだが、なんていうか全体的にしょんぼりしているというか……土地が痩せたように見えたのである。

 作物すら育っていない、土だけの畑。

 土が乾燥してひび割れているだとか、草一本生えていないだとか、そういうわけでもない。

 これから種なり苗なりを植えると言われればそうなんだ、と思えるような状態だが、しかしそれでもユッカの目には自然特有の力というか、そういったものが一切感じられなかったのである。


(なんだろな、土の栄養が足りてなさそうとか、そんな感じでもないんだけどな……)


「オイラたちが力を回さなきゃこんなもんペポよ」

「そうなの?」

「それでも別にオイラたちは困らんペポが、ここに暮らす他の者たちからすると作物が育たなくなって住みづらくなっていくペポ」


 ククルビタは別に農業をしなくても生きていけるようだし、その言葉に嘘はなさそうだ。


「あっ、戻って来たんだね」


 畑を確認していたら、村長さんがユッカたちに気付いてやって来た。

 ところがククルビタの姿を見るなり、ぴたりと足が止まる。


「まさか……」

「おう、なんペポか。見世物じゃねーペポ」


「この精霊口が悪いな」


 村長さんに対してオラついた態度のククルビタに、ユッカは思わず突っ込んでいた。


 いや、確かにククルビタからすれば、とりあえず住まわせてやってる、くらいの認識なのかもしれないが……


「は、畑の守り神!? まさかホントに存在したっていうのかい!?」


「神ぃ!?」


 驚愕する村長さん。ククルビタから精霊と聞いているにも関わらず神扱いされて思わず驚くユッカ。

 神扱いされて何故かちょっとだけふふんとふんぞり返るククルビタ。


 それぞれがそれぞれの反応をしていたものの。


「とりあえず、色々とお話があります」


 収拾がつかなくなるまえに、ディオスの落ち着き払った声がした。

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