第八章 Ⅲ
第八章
Ⅲ
雪時は大学の中庭で項垂れていた。心にぽっかりと穴が開いてしまっている。その空間が、埋まる気配はない。
あいつ、どこに行ったんだろう……。悪態ついて、終わってしまったな……。後悔先を絶たず、とはこのことか。
後悔をしないと決めていたはずなのに、結局後悔をしている。失ってから、何を思ったって、後の祭りだ。
あんなに、うるさいと感じていたのに、急になくなると静かに感じるものだな……。
雪時は一つため息をついた。その時、ぽんと肩に手を置かれる。
「どうしたー、大丈夫か?」
その声に勢いよく顔を上げれば、そこにはつい最近できた友人たちがいた。驚いた表情で、雪時を見ている。
少しだけ、期待してしまった。あいつではないか、と。勝手に期待して落胆した自分を思い返し、友人たちに申し訳なくなった。
「なに、何事?」
「いや……」
「……俺たちで良ければ、聞くけど?」
雪時はその言葉に促されるように、ぽつりぽつりと語り始めた。傍にいたうるさい存在が急にいなくなったこと、何も話さずに別れてしまったこと、心に穴が開いたような感覚に陥っていること――。
すべてを語った雪時を、友人たちは小突く。
「おい、彼女がいたなんて知らなかったぞ」
「いや、彼女じゃないんだが……」
「……じゃあ、すげえ大事な存在だったんだな」
「……大事?」
「だって、心に穴が開いているんだろ? その存在が雪時にとって大きかったってことじゃねえか」
雪時は友人たちの言葉に目を見開いた。すとんと友人たちの言葉が胸に落ちていく。ああ、そうかと納得した。言われるまで気がつかないとは、自分は意外と鈍かったのかもしれない。
「……そう、か」
「雪時、俺の胸を貸すぞ」
「……は?」
「馬鹿だな。こういう時は泣いちまえ。泣いて、悲しいなって思って、割り切ってから次に進むんだよ。でないと、一生そこから前に進めないぞ」
くしゃりと友人たちの手が、雪時の頭を乱雑に撫でる。雪時の視界が滲んだ。しばらくして自分の嗚咽が遠くから聞こえてくるように感じた。
友人たちは、何も言わずにただ雪時が落ち着くまで傍にいてくれた。
それが、雪時のぽっかりと空いた穴を、埋めてくれたような気がしたのであった――。




