最終章
最終章
あれから雪時は、時間をかけて穴が開いた心をゆっくりと埋めていった。一人では叶わなかっただろうそれを、友人たちが自然と協力してくれていた。
――楽人と出会ったのは、偶然ではなく、必然であった。
今では自然とそう思える。
最初はよく分からない存在で、鬱陶しくて仕方がなくて。だが、知らないうちに大きな存在となっていて、それすらも失ってから気がついた。
結局、あれ以来楽人には会うことができなかったが、それでも失ったものだけではなかった。失うものがあれば、得るものだってある。
楽人を失いこそしたが、友人たちを得ることができた。それは、きっと、楽人のおかげだったのだろうと思う。
ありがとな……。
今は届かない言葉を、心の中で祈るようにして呟く。
だが、それにどこからか、「お前のおかげでもあるんだよ」と聞こえた気がした。雪時は思わず振り向いたが、誰もいなかった。
気のせい、か……。
その時、雪時を呼ぶ声が前からした。友人たちだ。声のほうへと顔を向け、「今行く」と言いながら走り始める。
もう、一人ではない。
楽人がいなくても、彼らがいる。
大事な存在を、今度こそ失わない。やっと、気がつくことができたから――。
――雪時は、前に向かって進んで行く。
彼の背中を、今日も、優しく風が押してくれていたのであった。




