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交錯  作者: 色彩和
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第七章 Ⅲ

第七章


 Ⅲ


 楽人は今だと思った。

 雪時が変わりつつあるこの時こそ、そして、彼らの関係こそ、必要な物だと思ったのである。

 雪時が、彼らに素直に言えた瞬間が、鍵だ……。

 狙いはただ一つ。一度しか使えない力を、無駄にはしたくない。雪時がここからどう変わるかが、重要なのである。

 人生はまだ長い。特に、雪時の年齢であれば、まだまだ先があるのだ。楽人が生きてきた年月とは比べ物にならないほどに短いが、人間からしたらまだ人生の途中だ。しかも、まだ半分にも満たないぐらいしか生きていないはずなのだ。その人生の中で、今変わらなければ、今後は変わらないかもしれない。むしろ、悪化する可能性もある。

 俺を救ってくれた、雪時には後悔してほしくないんだよ……。楽しく過ごしてほしい、俺がいなくても、誰かと共に歩いてほしいんだ……!

 楽人はぐっと拳を力強く作る。そこには、たくさんの想いが込められていた。希望、願い、祈り……そんなものでもあった。

 ――楽人の勝負どころである。

 ごくり、と息を呑む。やけにその音が響いて聞こえた気がした。

 雪時が友人と話しているところが、楽人の視界に映る。

 友人たちは、笑って告げた。

「凄いな、もっとゆっくり見てえよ。また来てもいいか?」

「……あ、うん」

 雪時が頷く。口元が緩んだ。柔らかく、微笑む。

 ――今だ。

 楽人はその力を発動した。拳を開いて、手の平を雪時へ向ける。

 雪時が言葉を発した。

「……俺も、また来てくれると嬉しい。一緒に、パズルをしよう」

 ――楽人の力によって、彼らの心にその言葉が届く。

 雪時が本当に嬉しいという思いが。社交辞令ではなく、本心から言っていることが。

 彼らも嬉しそうに頷いた。笑い声が響き渡る。

 それを遠目で見ていた楽人。にっと笑った。

 ――すでに、身体は透け始めていた。

「……もう、たぶんだけど、大丈夫だろ、雪時。俺が、いなくなってもさ(・・・・・・・・)

 楽人は空を仰ぐ。天井しかないはずのそこに、以前見えた青空があった気がした。

 ゆっくりと視線を雪時へ向け、それから静かに目を閉じる。

「……ありがとう、雪時」

 楽人の姿は、静かにすう……っと消えていった。


 その微かな声に、雪時は反応した。何かが聞こえた気がしたのだ。

 ――楽人の声で。

「……」

 雪時は友人たちに呼ばれ、視線を戻す。


 まだ、雪時はその事実を知らない――。

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