第七章 Ⅱ
第七章
Ⅱ
午後、雪時の家には、賑やかな声が響き渡っていた。
楽人はそれを遠目で笑って見ている。その姿が見えるのは、雪時のみだ。
正直に言って、雪時は内心腹が立って仕方がない。何故なら、楽人の笑うは、「にやにや」という効果音が付きそうな笑い方だったからだ。
あの野郎……!
握りたくなる拳を、ぐっと堪えて我慢する。今こんなところで変な動きをすれば、来ている彼らに怪しまれる。せっかく友人となりつつある彼らがいるのだ。
それに――。
文句なら、後からどれだけでも言える……!
楽人が姿を消すことはないだろう。雪時はそう思っている。
彼はいつも雪時の隣にいた。笑って、茶化してくるのだ。ほとんど離れたこともない。
皆が帰ったら、文句を言ってやる……!
そう心に誓って、雪時は意識を彼らに向けた。
全員、雪時のパズルコレクションを見て、感嘆の声を上げている。「あれがいい」、「あれが綺麗だ」、口々にそう告げる声が雪時の耳に届く。
――単純に嬉しいと思った。
最近はまったく誰とも交流することもなかった。たった一人を除いて、だが。
あの立体パズルは完全にきっかけとなっていた。彼らが、目の前にいる皆がどういう経緯であの立体パズルに手を付けたのかは分からないが、それがきっかけとなってジグソーパズルを雪時の家まで見に来ている。
これが、普通になるのだろうか。
まだ、分からない。そうなると願って、それが裏切られたときは、きっと立ち直れないだろう。
だが、それでも――。
それでも……、少しでも、これが普通の時間となって欲しい――。
そう思ったのは、雪時の進歩だったのだろう。
この時、彼が少しだけ、前に進んだ瞬間であったのだった――。




