第七章 Ⅰ
第七章
Ⅰ
ある日、雪時は部屋の掃除を行っていた。それはもう徹底的にである。
今までは自分が生活するだけで、そこまで気にしていなかったが、今日は違う。朝早くに起きて、数日前からそわそわして落ち着かないのを、動いて忘れようとしていた。だが、動いていても、頭の中はそれで占領されてしまっていて、結局落ち着くことはない。
雪時が部屋を何度も往復して、掃除しているのを楽人は不思議そうに眺めていた。特に何もしないが、普段と違う彼の様子をただただじっと眺めていたのであった。
さすがにその視線が鬱陶しくなったのか、雪時が振り向く。
「……なんだ、急に」
「いや、それは俺のセリフなんだけど。どうしたん、急に?」
「……別に」
「はーい、嘘ー。雪時は分かりやすいんだから、そんな嘘ついてもどうにもなりませーん」
「……うわ、うざ」
楽人は雪時から返ってきた言葉に、わざとらしく返す。最終的に、呆れたような、本気でうざいと思っているような低い声が雪時から返ってきた。それに対して、思わず苦笑しそうになった。それを表情には出さずに、再度わざとらしく、「うわあ、相変わらずひでえの」と明るく言葉を紡ぐ。
だが、結局雪時から返ってきたのは、深いため息だった。
楽人が次の言葉を待っていると、小さく「今日だろ」と彼は呟いた。
はて、何だったかなと考えつつ、再度じっと彼を見つめる。最終的に折れたのは、雪時で。もう一度深いため息をついた後、ぽつりと呟いた。
「……今日、昼から家に来るから、パズル見に」
その言葉に、楽人は目をキラキラと輝かせた。
「そうか、今日だったか!」
「すっかり、忘れていたよ!」と楽し気に言葉を紡ぐ楽人へ、雪時は呆れつつ言葉を紡いだ。
「……お前には、関係ない気がするが」
「酷い! 俺にとっても、重要なんだよ!」
しっかり、見届けねえと。そう決意した楽人は、鼻歌交じりに午前中を過ごすのであった。




