第六章 Ⅲ
第六章
Ⅲ
傍で見ていた楽人は、これだと思った。
雪時が、他人と、仲良さげに話している。今、目の前で。今までなかった光景であった。
これが、続くのかどうかは別として、まずはこの機会が、これがチャンスだと思ったのである。
やっと掴んだ人間関係だ。これが、どういう結果になるかは分からないが、彼がこの関係を大事にしてくれることを祈りたい。今、自分の力を使うのは、時期尚早だと分かっている。だから、まだ力を使うつもりはなかった。
だが、これから、彼はどうするのだろうか。この関係を、上手く続けていこうと考えているのだろうか。
楽人は、雪時が人と離れたのを確認してから、声をかけた。
「なあ、雪時。彼らと仲良くなれたのか?」
「……珍しいな。お前が会話を聞いていなかったなんて。いつもなら、口うるさく、そこはこう言えだのなんだの言うだろうが」
「それはそれ、これはこれ。いいじゃーん、別に。雪時だって、いつもは会話なんか聞いているな、とかなんとか文句言うだろ?」
「……うるさい」
雪時はふいっと顔を背けた。
あ、やべっ。機嫌損ねたか……?
どうしよう、と悩んでいれば、雪時がぽつりと呟く。だが、それを聞き取ることはできず、楽人は首を傾げてしまった。聞き取れなかったものは仕方がないので、再度聞いてみることにする。
「ごめん、なんて?」
「……だから、今度家に来る。ジグソーパズルが見たいんだと」
それを聞いた楽人は、心の中でガッツポーズをした。
雪時が、第一歩を踏み出したのである。それを、大事にしてほしいと願うのと同時に、楽人が力を使う機会ができることを願った。
大事なチャンス、逃さないようにと決意を胸に秘める、楽人であった――。




