第五章 Ⅱ
第五章
Ⅱ
ここで、今更だが楽人は自分の力を確認してみることにした。本当に自分でも今更だとは思うが、現状確認は必須だと考えたのである。
一つ、人間とは違い、宙に浮くこと。
完全に力とは違う気がするが、一応上げておく。
二つ、なんとなくすべての人間の気配が分かること。
かといって、万能でないことは自分が重々承知している。雪時の気配だけはばっちり分かるが、だからと言ってどうこうするわけではない。
雪時に言ったら、気味悪がられそう……。
楽人は苦笑する。おそらくあながち間違っていないその予想に、自分で言っておいてなんだか悲しくなってきた。そのことに、自ら触れることはない。さらに自分が悲しくなることが分かっているからだ。前向きさが売りの楽人が思い詰めることは、できればあの一件が最初で最後としたい。
そして、三つ。相手に想いをぶつけることができること。
確実にこれが一番力っぽいと自分でも思う。前向きさが取り柄だからか、照れ隠しも、皮肉も、嫌味も、彼からしたらすべての本音が理解できた。そして、それを相手へとぶつけることができる。人間関係が大事だと思えるのは、この力のおかげでもあると彼は思っている。楽人が受け止め、それを相手に伝えれば、それは現実となり、気持ちが分からずに悩む人間を救う可能性が高くなる。
だが――。
その人間に力を貸すのは、一度きりだ。
そう考えているのは、楽人である。本来回数制限なんてない。勝手に彼が決めているだけだ。
しかし、彼は思う。人間は考える頭が、進む力がある。一人じゃなくて、周囲の人間の、いわば仲間の力を借りることだってできる。
神の力を借りることばかりにとらわれるようになってしまっては、本末転倒だ。たとえそれが、人間の瞳には映らなくても――。
楽人はそう考える。だから、雪時にも一度だけ使うつもりだ。
タイミングを考えないとな……。
楽人は今日も考える。優しき人間を、雪時の手助けをするために――。




