第四章 Ⅱ
第四章
Ⅱ
――雪時は、その日夢を見た。
幼い頃の記憶。自分が持っている、幼少過ごした頃の記憶だった。
雪時は、幼い頃から消極的だった。ネガティブなところは、今よりは幾度かマシであったが、それでも自分が言ったことを後悔し、自分が悪いと思い込むことがあった。だが、今より人とかかわることは好きだった。
親戚の家に行ったとき、些細なことで喧嘩をした。喧嘩をしたことにより、大人が出てきてどちらが悪いだの、謝りなさいだの、いろんな言葉が飛び交った。けど、雪時はそれを聞きたくなかった。思わず家を飛び出していたのだ。
夕方に近くなりつつある時間に走り抜ける。知らない道でも、暗い道でも、怖くなかった。それ以上に、なんだか悔しく感じた。
おとなは、やっぱりめんどうだ……。
雪時は走って、走って、走った。そうして、気がついたときには、森の中にいた。道らしい道はあまりなかった。なんとなく、人が通っていたのだろう、あまり草の生えていない道らしいところをゆっくりと歩く。そうして、しばらく歩いていれば、祠の上に乗っている大人がいた。雪時に気がついていないようだったが、その人に雪時は声をかける。
『なにしてるの?』
はっと雪時は起きた。荒くなっている息を整える。何故だろうか、その夢が怖く感じた。
「なん、だったんだ……。あいつは、誰だった、っけ……?」
一人で問いかける雪時に、空間は何も答えない。ただ沈黙を貫くだけ。
楽人も出てこない。寝ているのだろう、何も言ってこなかった。
雪時は、どうしても夢が気になった。けれど、思い出せない。いや、思い出したくない気がした。
「……寝よう。起きてから、考えればいい」
静かに呟いた声は、誰にも届かずに空間に溶け込んでいった。




