第9話 アートとは
私は美大卒だ。
数年前に絵画大賞展で副賞を獲って名前が売れ、私の絵を買いたいと言ってくれる人が現れた。
お陰で妻と猫と三人で暮らせるようになった。
F100の絵を仕上げるのに三か月かかる。材料費だけでも一か月分の家賃に匹敵するが、私の絵を気に入ってくれる人がいるお陰で何とか生計を立てられている。
ここ最近のニュースを見て、私は本当にアーティストなのか疑問に思うようになった。
壁にテープで貼られたバナナが「アート」だというのだ!
その値段を聞いた瞬間、私は眩暈を覚えた。
コンセプチュアル・アートだと分かってはいるが、買った人物は壁のバナナを皆の前で食べてしまったのだ。
アートが分からなくなった瞬間だった。
美大でダダイズムも学んだが、あのバナナだけはどうしても億もするアートには思えなかった。
私が頭を悩ませていると、妻が言った。
「うちの子もアートになるわね」
彼女の言葉で新しいアートの形を思いついた。
アクリルケースに猫が入れる穴を開ける。猫が入ると、生きているはずなのにまるで置物のように見える。
その様子をリアルタイムで世界中に配信したらどうだろう。
大ヒットだった。
「これはアートじゃない」と否定するコメントも少なからずはあった。
動画収益のお陰で生活が楽になった。
私にとって愛猫は、歩く姿も、食べる姿も、私を睨む姿も全てアートである。
2026/03/01




