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短篇集  作者: 猫田たい子
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43/48

第43話 水玉のピエロ

 マンホールの蓋が開き、中からピエロが現れた。

 不思議な光景だったが、誰も気に留めなかった。


 ピエロは丁寧にお辞儀をすると、シャボン玉を吹き始めた。

 水玉模様の泡が次々生まれると、誘われるように子供たちが集まってきた。


 シャボン玉は弾けなかった。

 そのまま壁に張り付き、壁一面を水玉模様に染めていった。


 ピエロが吹き出すシャボン玉は、やがて町中へと広がっていった。

 建物や道路、車やバス、何もかもが水玉模様に変わっていった。


 大人たちは恐れた。

 でも、子供たちは笑った。


 ピエロも笑った。

 ――子供たちにだけに……。


 消えないシャボン玉は、次第に人の身体にも張り付き始めた。

 腕や顔、手足や背中に、水玉模様が次々と浮かび上がった。


「ピエロを捕まえろ!」

 誰かが叫んだ。


 その一言をきっかけに、みんな一斉にピエロを追い始めた。


 でも、ピエロは逃げ足が速かった。

 不気味な笑みを浮かべながらシャボン玉を巧みに操って、ふわりふわりと宙へ跳ね上がっていった。


 子供たちはピエロを見て大喜びした。


 雨が降り始めた。

 雨粒が町を叩き、水玉模様を消していった。


 ピエロは雨が嫌いだった。

 笑顔を絶やさず、逃げるようにマンホールへ駆け込み、その中へ姿を消した。


 ピエロの後を、雨水に流された水玉模様が続いていった。


 ――子供たちも……。


 雨が止むと、ピエロも水玉模様も消えていた。

 大人たちはほっとした。


 でも――


 子供たちの姿も消えていた。




2026/08/30

RIP ティム・カリー & 草間彌生先生

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