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短篇集  作者: 猫田たい子
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38/47

第38話 傾いた傘

 雨だった。


 病院へ行く日だったので混雑を避けようと一本早いバスに乗った。


 朝の七時。

 それでも車内は満員だった。


 湿った傘の匂いに曇った窓。

 誰もが少しだけ疲れた顔をしていた。


 次第に片頭痛がしてきて、憂鬱な気持ちになった。


 曇った窓越しの外をぼんやり眺めていると、黒い傘をさした男性が愛犬を散歩させていた。


 気になって目を凝らすと、傘は自分ではなく犬の方へ傾いていた。


――男性の肩は雨に濡れていた。


 犬が濡れないように、何度も傘の位置を直していた。

 犬はそんなことなど知らない顔で、雨の中を楽しそうに歩いていた。


 その姿を見て、優しさというのは相手が気づくかではなく、濡れる方を自分で選ぶことなのかもしれないと思った。


 次の停留所で降りた。

 雨はまだ降っていたけれど、少しだけ片頭痛がなくなった。




2026/06/02

今朝の自分の出来事。

病院行くのに雨やから朝一本早いバス乗ったけど、人で溢れてた……。

もーーー、ほんと、くったくたーー。

でも散歩してる人がいてて、ほんまに傘を犬に傾けてて、なんかかわいい~って思った。

最近病院行く日、雨ばっかりや。雨の日のバスはほんと、何とも言えん。

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