33/47
第33話 泥棒とノクターン
空き家に忍び込んだ泥棒は、リビングの家具に目をやった。
その中のピアノが目に入った。
――埃ひとつなく、最近誰かが触ったかのようだった。
泥棒は子供の頃に住んでいた家のピアノを思い出した。
懐かしさに駆られ、鍵盤に指を置いた。
柔らかい旋律が部屋に広がった。
ショパンの『ノクターン』だ。
音色に誘われるように、通りすがりの人たちが次々と窓辺に集まった。
空き家はショパンのリサイタル会場に変わった。
演奏が終わると、自然と拍手が湧き起こった。
音の余韻に包まれる中で、泥棒は本物のピアニストのように席を立って軽くお辞儀をした。
だが、窓の外でサイレンが鳴り響いた。
警察がやって来たのだ。
――やっぱり捕まる運命か……。
泥棒は苦笑しながら手を挙げたが、指先に視線をやった。
――あの旋律だけは自分のものだった……。
警察に連行されながらも、自然と笑みがこぼれた。
2026/05/23
駅で見かけた「大どろぼうの家」の広告と、昨日、ケヴィン・チェンのピアノリサイタルの抽選が当たった! のを合わせてお題にした。
ケヴィンのピアノ、楽しみ!




