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短篇集  作者: 猫田たい子
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第31話 一流のシェフと食べ物を残す客

 毎晩、一流のシェフが食卓に立つ。

 銀の皿、磨き抜かれたカトラリー。

 料理は完璧な温度で運ばれ、私は「どうぞ」と丁寧に迎えられる。


 最初は感動した。

 こんな贅沢が毎日続くなんて――。


 数日後、気がついた。

――また同じ料理だ。


 見た目は少し違うが、盛り付けはまるでアート。

 でも……香りは毎回同じ。


 私は少し残すようになった。


「お口に合いませんか?」

 シェフは青ざめた。


 翌日、シェフは火加減を変えて皿を豪華な物にした。

 でも……私はまた残した。


「体のどこか、悪いのでは……」


 ついにシェフは医者を呼んだ。

 脈を測られ、心音を聞かれ、全身の検査をされた。


「原因不明ですね……」

 医者は深刻な顔で言った。


――違う。そうじゃない。


 私は別の香りが欲しかっただけ。

 でも……シェフには分かってもらえない。


 今日も同じ香りの料理が運ばれてくる。

 ため息をついて窓の外を見た。


――カリカリの袋、変えてくれないかな。





2026/05/17


昨夜、うちの愛猫が新しい缶詰めを出した瞬間に平らげた。

先月読んだ、岩手大学の「ネコがごはんを残す理由を解明 ―同じ餌でも匂いを変えると再び食べる―」( https://x.gd/astG2 )を思い出して、お題として話を考えた。

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