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短篇集  作者: 猫田たい子
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25/48

第25話 猫の島美術館

 廃墟の建物に、行き場のない猫たちが集まっていた。

 夜になると小さな集会が開かれる。


「今日も人間はご飯をくれなかった」

「このままだと、冬を越せないニャ……」


 痩せた猫が言う。

「人間はアートが好きらしいニャ。この廃墟を『猫アート』で埋め尽くしたらどうだ?」

「アート?」

「人間は『映えるもの』に集まる。ここを有名にすれば、餌も注目も集まるはずニャ」


 猫たちは廃墟に爪痕を残した。――次第に抽象画のような模様に見え始めた。


 しばらくして、猫たちの爪痕がSNSで話題になった。人間たちはそこを「#猫の島美術館」と呼び、訪れるようになった。


 だが、廃墟の持ち主は猫が大嫌いだった。

「勝手に住み着くな!」


 猫たちは追い出されてしまった。


 その出来事が拡散され、今度は「#かわいそうな猫たち」として注目された。


 保護団体が動き、猫たちは別の場所へと移された。


 その場所は「猫カフェ」と呼ばれていた。

 清潔な床、食事、健康診断など、全てが整っていた。


 ガラス越しに人間が猫を観る。

 入口の看板にはこう書かれていた。

――「猫の島美術館から移った猫たち」


 猫たちは最初、戸惑った。

 だが一匹が言った。

「ここは、悪くないニャ」


 窓の外で、人間たちが順番待ちの列を作りながら笑い声を上げている。

 ガラス越しにスマートフォンが何度も向けられた。


「結局、島はどこにも行かなかったニャ」

「廃墟を追い出された時、全部終わったと思ったけど……」

「自由な場所から、閉じられた場所に変わったって」


 間を置いて一匹が言った。

「でも……『見られてる』って状態は、最初からずっと同じだった気がするニャ」


 廃墟やSNS、猫カフェでも、人間はいつも猫たちを『そこにあるもの』として眺めていた。


「じゃあ、島って何だったんだニャ?」

「移動したんじゃなくて――最初から人間の頭の中にあったんじゃニャい?」


 誰も答えなかった。


 ガラスの向こうで、人間たちが楽しそうに話している。

 次の「展示名」を決める声が猫たちに聞こえた。





2026/05/02


GW、中之島美術館が猫之島美術館になってたから行って来た!

猫好きは、かわいい猫を求めて並ぶ。そんな一日でした。


「驚異の部屋の私たち、消滅せよ。— 森村泰昌・ヤノベケンジ・やなぎみわ —」

2026.04.25 – 2026.07.20


宇宙猫、かわいかった~。

7月20日までやってるから、大阪来たら是非、中之島美術館へ!

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