第25話 猫の島美術館
廃墟の建物に、行き場のない猫たちが集まっていた。
夜になると小さな集会が開かれる。
「今日も人間はご飯をくれなかった」
「このままだと、冬を越せないニャ……」
痩せた猫が言う。
「人間はアートが好きらしいニャ。この廃墟を『猫アート』で埋め尽くしたらどうだ?」
「アート?」
「人間は『映えるもの』に集まる。ここを有名にすれば、餌も注目も集まるはずニャ」
猫たちは廃墟に爪痕を残した。――次第に抽象画のような模様に見え始めた。
しばらくして、猫たちの爪痕がSNSで話題になった。人間たちはそこを「#猫の島美術館」と呼び、訪れるようになった。
だが、廃墟の持ち主は猫が大嫌いだった。
「勝手に住み着くな!」
猫たちは追い出されてしまった。
その出来事が拡散され、今度は「#かわいそうな猫たち」として注目された。
保護団体が動き、猫たちは別の場所へと移された。
その場所は「猫カフェ」と呼ばれていた。
清潔な床、食事、健康診断など、全てが整っていた。
ガラス越しに人間が猫を観る。
入口の看板にはこう書かれていた。
――「猫の島美術館から移った猫たち」
猫たちは最初、戸惑った。
だが一匹が言った。
「ここは、悪くないニャ」
窓の外で、人間たちが順番待ちの列を作りながら笑い声を上げている。
ガラス越しにスマートフォンが何度も向けられた。
「結局、島はどこにも行かなかったニャ」
「廃墟を追い出された時、全部終わったと思ったけど……」
「自由な場所から、閉じられた場所に変わったって」
間を置いて一匹が言った。
「でも……『見られてる』って状態は、最初からずっと同じだった気がするニャ」
廃墟やSNS、猫カフェでも、人間はいつも猫たちを『そこにあるもの』として眺めていた。
「じゃあ、島って何だったんだニャ?」
「移動したんじゃなくて――最初から人間の頭の中にあったんじゃニャい?」
誰も答えなかった。
ガラスの向こうで、人間たちが楽しそうに話している。
次の「展示名」を決める声が猫たちに聞こえた。
2026/05/02
GW、中之島美術館が猫之島美術館になってたから行って来た!
猫好きは、かわいい猫を求めて並ぶ。そんな一日でした。
「驚異の部屋の私たち、消滅せよ。— 森村泰昌・ヤノベケンジ・やなぎみわ —」
2026.04.25 – 2026.07.20
宇宙猫、かわいかった~。
7月20日までやってるから、大阪来たら是非、中之島美術館へ!




